起死回生で白星をものにした横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)の一番に、協会関係者も思わずうなった。

 立ち合いから劣勢だった横綱の一連の流れに、八角理事長(元横綱北勝海)は「(千代の国に)いなされて腰がだんだんと高くなっている。立ち合いも棒立ちだ」と本調子でないことを指摘。

 それでも執念で白星を呼び込んだことに「膝が棒立ちになりながら、最後の最後に力を振り絞って、よく足がついていった。足腰が重くて柔らかい」と下半身の強靱(きょうじん)さを強調。

 善戦した千代の国(26=九重)については「惜しいというより、最後の一押しが大変なんだ。自分も大乃国さん(元横綱=現芝田山親方)と対戦した時がそうだった」と地力の違いも指摘した。

 土俵下で審判長を務めた審判部の藤島副部長(元大関武双山)は、稀勢の里の残り腰を「初場所千秋楽の白鵬戦のような残し方だった。絶体絶命の体勢で、相手が引いてくれなかったら負けていたかもしれない」と分析。さらに「(劣勢でも)稀勢の里は引こうとしなかった。それが、この結果になったのでは」と、精神的な強さを勝因の一端に挙げていた。