右膝痛のため大相撲秋場所を最後に現役を引退した、元十両若乃島(33=芝田山、本名・再田史也)の断髪式が9月30日、東京・両国国技館で行われた。

 若乃島は00年春場所、放駒部屋から初土俵を踏み、師匠だった先代放駒親方(元大関魁傑)の定年に伴い、13年2月に芝田山部屋へ移籍。得意は突き、押しで14年あまりをかけ、14年名古屋場所で新十両昇進を果たした。最高位は15年秋場所の西十両7枚目。十両は通算7場所務め、現役最後の秋場所は東幕下43枚目(4勝3敗)だった。

 断髪式には、荒磯親方(元前頭玉飛鳥)、君ケ浜親方(元前頭宝智山)、前頭琴奨菊(佐渡ケ嶽)、阿武咲(阿武松)ら一門の親方、関取衆はじめ関係者約250人が出席。最後に師匠の芝田山親方(54=元横綱大乃国)が留めばさみを入れ、17年半の土俵人生に別れを告げた。その後、両国国技館内で行われたパーティーでは、親交があり同じ鹿児島・奄美出身で歌手の元ちとせ(38)、中孝介(37)が前途を祝し、美声を披露した。

 「やり切った感じで、すがすがしい気持ちだった。いろいろな人に来てもらったから笑顔を見せないと」と、涙を流すことはなかった。ただ、さまざまな思いが頭の中を巡る中「やっぱり先代の親方のことを考えてました。何と言ってくれるか…。『頑張ったな』と言ってくれると思います」と、しんみり話した。

 一番の思い出は、初土俵から約14年で新十両昇進を決めた14年夏場所。その場所中に先代が急死したこともあり「突然すぎて本当に信じられなかった。絶対に忘れられない場所」と振り返った。何度も引退しようと思ったことがあったが、先代から口酸っぱく言われた「あきらめるな」「我慢しろ」の言葉が押しとどめてくれた。「自分は出会いに恵まれた。すごい偉大な親方2人に出会えました」と感謝した。

 第2の人生は、11月から東京・世田谷区内にある、しゃぶしゃぶ店でスタートする。見習いの身だが、将来的には「自分の店を出したい。勝負するなら都内で」と目を輝かせた。