春場所初日の会場で、貴乃花親方の姿を目撃した関係者はいなかった。

 1月に理事解任が決まり、2月の役員候補選挙でも理事返り咲きはならず、今場所中は役員待遇委員。本場所中は通常、朝稽古の指導を終えた午後の早い段階で会場内の役員室に出勤するが、同部屋で顔を合わせるはずの理事らは「来ていない。連絡もない」と声をそろえた。

 本場所の会場には役員室の他にも審判部室、巡業部室など、親方衆の職務によって「居場所」が決まってくる。貴乃花親方は1月4日の理事解任を受け、指導普及部副部長を務めることになった。だが春場所の会場には指導普及部室はない。貴乃花親方が滞在すべき場所は役員室のため、ある役員は「よくないよね。来ることができないなら、きちんと連絡すべき」と険しい表情を見せていた。

 貴乃花親方は2日前の9日に、貴ノ岩の調査や自身の理事解任について透明性を求め、内閣府に告発状を提出したことを発表した。その直後だけに、八角理事長(元横綱北勝海)ら協会執行部との「呉越同舟」を避けたと受け止められても仕方ない。この日朝は、貴ノ岩への大声援が予想されることに「そうなってもらえるように」と期待していたが、実際には聞いていない可能性がある。