東前頭筆頭遠藤(27=追手風)が勝ち越しを決め、来場所の新三役を確実にした。2大関を破った平幕の千代丸を、引き落として8勝目。3年前の春、左膝半月板及び前十字靱帯(じんたい)損傷の大けがを負った大阪で、4度目の前頭筆頭で迎えた挑戦をついに実らせた。横綱鶴竜が2敗で平幕の魁聖を下し、12勝1敗。16年九州場所以来、4度目の賜杯に王手をかけた。

 遠藤は右で、前まわしに5度手をかけた。なのに、千代丸の巨大な腹も邪魔で取り切れない。ならば、押した。速い突き押しで圧力をかけ、ドンピシャで引き落とした。「しっかり集中してやった結果じゃないですか?」。勝ち越した。やっと手にする新三役。3年前、左膝に全治2カ月の重傷を負った大阪。うれしくないはずがない。

 前頭筆頭で迎えた4度目の今場所は14年春、秋、昨年夏の過去3度と手応えが違った。昨年九州場所の千秋楽を終え、寡黙な男が珍しく口を開いた。「手術して良かったなと思う。徐々に良くなってきて、しっかり“こうしたら”というイメージはある。何となく計画してることが、うまくいけば…」-。昨年7月下旬、内視鏡で左足首の遊離軟骨を除去。その後の秋場所から初の4場所連続勝ち越しだ。手術に踏み切った勇気が飛躍を呼んだ。

 スター候補の新三役。昨年九州場所以降、暗い話題が続く日本相撲協会は大歓迎だ。八角理事長(元横綱北勝海)は「ようやくだね。思ったより苦労したね。精神的にも1回(三役に)上がれば楽になると思う。常連になるんじゃないかな」と期待を寄せる。

 残り2日。遠藤は「まだ明日がある。集中してやるだけ」。8勝と言わず、10勝で待望の夏場所につなげるつもりだ。【加藤裕一】