日本相撲協会は4月30日、大相撲夏場所(13日初日、東京・両国国技館)の新番付を発表し、人気力士の遠藤(27=追手風)が新小結昇進を果たした。幕下10枚目格付け出しの鳴り物入りで、13年春場所で初土俵を踏んでからケガと闘い続けた5年。15年春場所では左膝半月板損傷の重傷を負い、一時は十両にまで陥落したが「アスリート型」の考え方で苦難を乗り越え、新三役の座を射止めた。

 苦労して、新三役の座をつかみ取った。それでも遠藤は埼玉・草加市の部屋で行った会見で、表情を緩めることなく「いつもの番付発表と変わらないです。気持ちは変わらないです」と淡々と話した。だが師匠の追手風親方(元前頭大翔山)は「ケガ、ケガ、ケガでこの3年間を無駄にしたことも多かった。やっと上がったという感じです」と、弟子の気持ちを代弁するように感激した。

 新入幕の13年秋場所で左足首を負傷し、のちに剥離骨折が発覚。15年春場所では左膝半月板損傷と前十字靱帯(じんたい)損傷の重傷を負い、17年名古屋場所では古傷の左足首の靱帯損傷で手術に踏み切った。「入門してからケガして、これからという時にまたケガ。それの繰り返し。タイミング悪くその都度、足首とか膝とか」と振り返った。

 ただ腐らなかった。稽古と治療とトレーニングを続ける毎日。「そのうちいいことがあるだろう」と前を向き続けた。私生活でも痛みを感じ、食生活にも気を配った。「ちゃんこの汁を飲んだら足がむくんで調子悪くなるんじゃないかな、とか考えるようになった」と力士らしからぬ発想。追手風親方が「『ずっと部屋にいて、お前大丈夫か?』と話したこともある。アスリートみたい」と話すほど、徹底して摂生してきた。コツコツ積み重ねてきたことが、ようやく実を結んだ。

 それでもケガが万全になったわけではなく「元に戻らないと思っている」と割り切っているが、諦めているわけでもない。ケガとの「付き合い方が見えてきた」という。付き合い方に関して多くは語らないが「もっとうまく付き合えると思う」と自信をのぞかせた。現状に満足せず、言い訳もせず、さらなる上を目指す。【佐々木隆史】