新小結遠藤(27=追手風)が、西前頭3枚目豊山との突き合いを制して三役初白星を挙げた。相手は金沢学院東高の3年後輩だが意識せず。普段はあまり笑顔は見せないポーカーフェースだが、言葉の端々から喜びがにじみ出た。2場所連続休場明けの横綱白鵬、大関とりの関脇栃ノ心は初日から2連勝した。

 館内に鳴り響く声援に祝福の声。それを一身に浴びても遠藤は、表情を緩めることなく支度部屋に戻ってきた。上がり座敷に腰をかけて、髪を結ってもらう間はずっと目を閉じ続けた。いつもとなんら変わらない様子。記者への質問にも多くは語らない。そんな遠藤が「良かったですね。勝ったのでうれしいですね」と小声でもらした。連日の声援に対して「うれしいですし、ありがたいですね」と感謝の言葉を並べた。

 立ち合いから、激しい突き合いの応酬となった。豊山が得意の突きに最初は引いたが、土俵際で踏ん張った。隙を見て懐に入り、土俵際に追い込んで冷静に引き落とした。後輩相手には、絶対に負けられない。そんな思いが表れた相撲内容だったが「特に」と意識はしなかった。

 一喜一憂しないのが強さでもある。場所前の新三役会見でも笑顔を見せることなく、淡々と質問に答え続けた。なぜ笑顔を見せないのか、と問われると「隙を見せないように」と真剣に返した。だから普段から表情を崩さないし、質問に口を開かない時もしばしばある。師匠の追手風親方(元前頭大翔山)も「相撲で勝って証明するしかないですから」と多くを語らない弟子の思いをくみ取った。

 待望の初日に、喜びの感情が出たのもつかの間。「いつもと変わらないですよ」とすぐに引き締めた。まだ2日目が終わったばかり。喜びは心の内にしまい込み、今日からまた無心で土俵に上がる。【佐々木隆史】