ファンの度肝を抜くような豪快なつりで、新大関栃ノ心(30=春日野)が初日から3連勝。ただそれは、もろ刃の剣でもあり、角界関係者の肝を冷やすものでもある。

 先場所同様、小結松鳳山(34=二所ノ関)に中にもぐられ、もろ差しを許した栃ノ心。こうなれば力勝負、とばかりに両上手を松鳳山の肩越しからグイとつかむと、クレーン車のごとくつり上げ、土俵際へ。振られた後、一呼吸置いて、再びつり出して勝負を決めた。

 豪快な一番を、協会トップの八角理事長(55=元横綱北勝海)は「すごい、力があるね。両方(の上手)を(松鳳山が)取られて引き上げられた。豪快だなあ」と話し、ただ強引だなだけでなく「引きつけが強く、腰を落としているから効く」と説明した。ただし膝に古傷を抱えるだけに「膝に負担がかかる。ケガをする時というのは(得てして)調子がいい時だから」と付け加えることも忘れなかった。

 幕内後半戦の審判長として、土俵下でこの一番を見届けた審判部の阿武松部長(元関脇益荒雄)も、同じような見解だ。「相手を身動きできないようにして、つって持っていくのはすごい。今、ああやってつれる力士はいませんから」と感嘆する一方で「ちょっと強引かな、と。(栃ノ心には)長く、強い力士でいてほしいから、あのような相撲は…」とケガと表裏一体の豪快な相撲を案じもした。ただ、相撲の流れで、たまに起こる取り口とあり「たまに、このような力相撲が何番か入ることもあるでしょうね」とも話した。