白鵬(33=宮城野)が、前人未到の横綱800勝に到達した。この日から再出場した東前頭2枚目豊山を上手投げで下して、昨年九州場所以来の中日勝ち越し。いくつもの記録を作ってきた横綱は、幕内1000勝と今年初となる41度目の優勝を視野に入れた。

手負いの豊山が目の前にいても、白鵬は横綱の厳しさを見せつけた。立ち合い左で張ってから左上手を取り、左手一本で182キロの巨漢を投げ飛ばした。支度部屋で、報道陣から横綱800勝目を祝福されて「ありがとうございます。こういうものはうれしいですね」と無邪気に笑った。

通算勝利数や幕内優勝回数など、さまざまな記録で歴代1位を更新してきた。それだけに、モチベーションを維持するのが難しかった。今回の800勝も、既に自身が歴代1位の記録を伸ばしただけにすぎない。「新記録なのか大台なのか分からない。まぁ、大台か」。強者ゆえの悩み。それでも20年東京オリンピックまで現役を続ける意向のある白鵬にとっては「ささやかな数字が今の私の原動力」とモチベーションにしている。

将来有望な力士のためにも記録を伸ばし続ける。「若者は記録が大きければ大きいほど燃えますからね」。かつての自分がそうだった。だからこそ、自らが壁となり目標になるために土俵に上がり続けている。

次のささやかな数字は、あと6勝で達成する「幕内1000勝」だ。加えて昨年九州場所以来の今年初優勝も「いきたいと思う」と狙っている。07年名古屋場所で昇進してから横綱12年目。大なり小なりケガも増え、加齢とともに体も少しずつだが衰えてきた。それでも気持ちだけは落とさない。「先場所休んで勢い余ってるから、それをしっかり出したい」。大台到達も、まだまだ歩みは止めない。【佐々木隆史】