1敗を守った大関高安(28=田子ノ浦)のここまでの相撲は、辛抱を覚えたなという印象だ。

この日も北勝富士を攻めあぐねた。強引とも思える、かいなひねりで墓穴を掘りそうにもなったが、そこから立て直せた。高安の代名詞ともいえる立ち合いで見せる豪快な体当たり、かち上げは今場所、まだ出ていない。序盤に取りこぼしが多かった反省からだろうか、ここまでは力的にもムキになるような相手ではないから、焦らず我慢してジックリと15日間を考えて、ペース配分しているように見える。問題は関脇以上との対戦が控える後半戦だ。本来の激しい相撲を取るためにも、ここからギアを1ランクも2ランクも上げられるかだ。ここまでは最終盤を勝ち抜くために、一本調子でない我慢の相撲を見てきた。トップを1差で追う展開は、精神的にもいいだろう。本来の「らしさ」が出れば初の賜杯も夢ではない。(日刊スポーツ評論家・高砂浦五郎=元大関朝潮)