16場所ぶりに復帰した幕内の土俵で既に負け越しが決まり、来場所の十両陥落が濃厚な西前頭14枚目の豊ノ島(35=豊ノ島)が、気持ちを入れ替えて連敗を3で止めた。

左の相四つの西前頭7枚目・宝富士(32=伊勢ケ浜)と対戦。思い通りに左を入れ、右もねじ込みながら前に。動きの中で1度、ふりほどかれ正対した後、再び四つに組み、左を差し込んだ。右も入った瞬間、見透かしたように、その右から鮮やかに肩透かしで、宝富士を土俵にはわせた。

不本意ではあるが、千秋楽を前に4勝目(10敗)。相撲巧者らしく、肩透かしでの勝利は、豊ノ島にとって3番目に多い決まり手。ただ「ケガをする前から、引き技でもあるから自分の中で封印していた」という。その言葉どおり、以前に幕内にいた15年秋場所4日目の臥牙丸戦以来、3年半ぶりに抜いた“伝家の宝刀”で、自重していたものの「体が反応したしタイミングも良かったから」と納得の表情だった。

ここまで、立ち合いの迷いも何番かあったが、この日は「部屋を出る前から『これでいこう』と決めていた」。今場所これまで何人かの“未知の相手”でなく、幕内上位で過去に8度対戦し、勝手知ったる相手だったことも、迷いを消してくれた。「迷いなく思い切って踏み込んで、後はそのときの流れに任せよう」とスムーズに体が動いた。苦しかった場所も、あと1番を残すのみだ。