大相撲夏場所で初優勝を飾った前頭8枚目の朝乃山(25=高砂)も、師匠には完敗!? 千秋楽から一夜明けた27日、都内の高砂部屋で高砂親方(元大関朝潮)同席で会見。師匠からは、今場所獲得した懸賞で冷暖房購入をおねだりされたり、2場所連続優勝の可能性を「へそが茶を沸かす」と完全否定されたり-。

爆笑トークで、すっかり主役の座を奪われた格好だが、負けじと? 看板力士を目指すと誓い、盛り上げた。

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師匠からの奇襲に、朝乃山はタジタジになった。会見も中盤。縦317センチ、横228センチの優勝額の置き場所を問われ、朝乃山が「まったく考えてないです」などと、ほほえましいやりとりが続いていた時だった。

高砂親方(以下親方) お前、いっぱい今回は懸賞をもらったからよ。部屋にクーラー入れようぜ。皆さんも暑いでしょ? 冬は寒いしょ。みんなのために。今回はお前が稼いだんだから、お前の金でいけよ。今回オレは稼いでないから。

この日は30度を超えていた上、部屋には約70人の報道陣が密集していた。師弟ともに額から汗が噴き出していたとはいえ、何の脈絡もない、いきなりの“おねだり”。爆笑の報道陣とは対照的に、朝乃山のほほ笑みは苦笑いになっていた。だが「(高砂親方が評論家を務める)日刊スポーツで買ってもらえませんか」と、即座に師匠の技を吸収。“おねだり返し”で、土俵外でもセンスの良さを見せた。

ただ、師匠の“口撃”は止まらなかった。2場所連続優勝の可能性を問われると、本人に答える間を与えず、勝手に答えてしまう。

親方 ハハハッ、お前、バカなことを言い出すな。へそが茶を沸かすぞ、このやろう(笑い)。8枚目だよ? 小結とか関脇とかじゃないんだぞ。先場所も7番しか勝ってないんだぞ。

弟子の快挙の可能性を完全否定した。だが、そこは親心。朝乃山は58年ぶりに三役経験がなく優勝。来場所は初めて横綱、大関をはじめ上位総当たりの番付となる見込みだ。その地位では「8番勝つのも大変なこと。8番勝ったら褒めてやる」と、弟子の重圧を軽減するようかばった格好だ。

師匠の気遣いのこもった爆笑トークに、朝乃山の舌も次第になめらかに。「上で活躍して看板力士になっていきたい」ときっぱり。一般的に横綱や大関を指す「看板力士」を目指すと誓った。そんな発言に師匠は目を細めながらも「運も実力のうち」と憎まれ口。最後まで“愛のむち”を緩めなかった。【高田文太】