横綱鶴竜(33=井筒)が、全勝で単独トップを守った。東前頭5枚目の琴奨菊を突き倒した。

初日からの11連勝は、優勝した昨年3月の春場所以来、2度目で自己最長に並んだ。今場所前は、バスケットボールの最高峰NBAのドラフトで、八村塁がウィザーズから日本人で初めて1巡目指名されたことに興奮。相撲界随一のNBAファンだけに自然と調子も上向きで、初の無傷の12連勝に挑む。

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オールラウンダー鶴竜の本領発揮だった。圧力のある琴奨菊の寄りを受け止めてはね返す力強さ。反撃に転じてからの攻めの速さ。土俵際で一発逆転の隙を許さないうまさ。万能型らしく、すべてがかみ合った11秒5の逆転勝ちだった。白鵬が不戦勝で、この日唯一の横綱戦。一身に背負った観衆の期待に応えた。「慌てなかった。立ち合いはあまり良くなかったけど踏ん張り、そこからの動きは良かった」と冷静に話した。

取組後とは対照的に、今場所前は八村のウィザーズからのドラフト1巡目指名に心を躍らせた。自身も幼少期はバスケットボールをプレーし「いつかファイナル(決勝)を見に行くのが夢」という大のNBAファン。だからこそ八村の指名に「本当にすごい」と力説した。「今のNBAはオールラウンダーが求められ、八村選手は3ポイントシュートを打ててリバウンドも強い。中も外もできて今のNBAに合っている。1年目でレギュラーになれば、2年目はスーパースターになっている」と予言した。

NBAの知識も角界随一だ。「主力のビールとウォールにトレードのうわさが出たけど、その2人に八村選手が加われば、来季のウィザーズは、けっこういい線いくと思う」。プレーオフ進出、さらにはその先に進む可能性にも言及した。

新たな道を切り開く八村に刺激を受け、自己最長タイとなる無傷の11連勝を飾り、さらに初の12連勝を挑む。今場所で歴代10位タイの横綱在位32場所だが、その間、12日目以降は39勝41敗。そんな苦手意識も「そういうことを気にしないよう、今は自分の相撲に集中したい」と消えている。最上級の刺激が6度目の賜杯へと導き始めた。【高田文太】