日本相撲協会は10日、新型コロナウイルス感染の疑いがあった幕下以下の力士1人のPCR検査で、陽性だったと発表した。角界で陽性が判明したのは初めて。当該力士は4日に体調不良を訴えた。8日に東京都内の病院でウイルス感染の簡易的な検査を受け、陽性とされた後に病院側が陰性と訂正。入院して、詳しく調べていた。開催を2週間延期して5月24日に初日を迎える大相撲夏場所(東京・両国国技館)への影響が懸念される。

国内外で猛威を振るい続ける新型コロナウイルスに、角界もついに襲われた。日本相撲協会は、幕下以下の力士1人のPCR検査で陽性反応が出たことを発表。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「本当に感染症というのは人ごとではない。身近に存在しているんだと痛感した」と話した。

同広報部長によると、当該力士は4日に発熱して以降、倦怠(けんたい)感や息苦しさ、血痰(けったん)などの症状を訴え、隔離されていたという。8日に都内の病院で感染確認の簡易的な検査を受け、病院側から陽性と伝えられたが、翌9日に病院側から陰性と訂正の連絡があった。再び検査を受けた結果、この日に陽性が判明した。

当該力士は都内の病院に入院中だが、容体については不明だという。感染経路などを含めた本人への聞き取り調査や、当該力士が所属する部屋の消毒、他力士ら協会員のPCR検査の実施有無などについては「保健所の指導のもとに行う」と方針を示した。

角界で初の陽性反応が出たことで協会広報部がこの日急きょ、全45部屋にアンケートを実施。マスクや消毒液の備蓄数、稽古の有無や検温実施について確認した。「全部なされている。クリアしている」と問題はなかったとした。朝稽古を中止しているのは当該力士の所属部屋のみで、現段階で体調不良を訴える力士、協会員の報告は受けていないという。

春場所は史上初の無観客で開催に踏み切り、感染者を出すことなく15日間完走。それでも国内で感染者が増加する状況に、3日の臨時理事会で夏場所開催の2週間延期を決定したばかりだった。相撲部屋では力士たちが稽古に加え、原則的に衣食住を共にする。1人がかかれば、その部屋でのクラスター(感染者集団)発生も心配される。夏場所初日に設定している5月24日まで約1カ月半。陽性反応が出ただけに開催への影響が懸念される。理事会開催なども「集まるのは難しい状況」と、電話連絡で話し合う方向だ。未曽有の事態に角界も大きく揺れ始めた。【佐々木隆史】