西前頭3枚目霧馬山(24=陸奥)が、2度目の大関挑戦で初勝利を果たした。貴景勝の押しを俊敏な動きでかわし、得意の四つ相撲で寄り切った。前日は新大関の朝乃山に対して接戦を演出。同じモンゴル出身で兄弟子の横綱鶴竜から食事面などで指導され、開花寸前のホープが初の上位総当たりで存在感を発揮する。横綱白鵬、朝乃山、関脇御嶽海の3人が初日からの全勝を守った。

   ◇   ◇   ◇

華麗に飛んだ。霧馬山は貴景勝に土俵際まで押し込まれたが、跳ねるように左へ回り込んでまわしを取った。左四つで一気に寄り、大関を土俵下に吹っ飛ばした。「負けたと思ったけど、最後にまわしが取れた」。貴景勝には昨年12月の冬巡業で初めて稽古をつけてもらった。同学年の大関からの殊勲星に「すごいうれしいです」。モンゴルから来日して約5年。少したどたどしさが残る日本語で、笑顔を見せた。

師匠の陸奥親方(元大関霧島)を思わせる細身の体も、新十両昇進から1年半足らずで約10キロ増えた。昨年9月、先代井筒親方(元関脇逆鉾)の死去にともない、鶴竜ら井筒部屋の力士が移籍。モンゴルにいたときから「テレビで見ていてあこがれだった」という横綱が兄弟子となり、土俵内外で積極的に指導された。「横綱が来て悪いことはひとつもない。若い衆もめちゃくちゃ稽古をするようになった」。稽古では毎日胸を出してもらうようになり「すり足一つでも厳しく見てもらえる」。食事では茶わん3杯のご飯を食べるまで、鶴竜が付きっきりで監視。「めちゃくちゃきつかった」という“食トレ”で体重は140キロまで増え、前に出る圧力がついた。

モンゴルの遊牧民として生まれ、性格は穏やか。しこ名に馬が入り、着物も馬が描かれた反物は「ペガサスみたい」とお気に入り。日本でも馬が恋しくなり、幕下時代は千葉・佐倉市内の乗馬クラブに足を運び、馬と触れ合うことでリフレッシュすることもあった。

今場所が初めての上位総当たりだが、幕内後半の取組にも「慣れてきた。すごい、いいですね」と充実感が上回っている。7日目は初の横綱戦。「自分の相撲を取れるようにしたい」と、初挑戦初金星を狙う。【佐藤礼征】

◆霧馬山鐵雄(きりばやま・てつお)本名・ビャンブチュルン・ハグワスレン。1996年4月24日、モンゴル・ドルノドゥ生まれ。体験入門を経て15年春場所で初土俵を踏み、19年春場所で新十両昇進。新入幕場所の20年初場所では11勝を挙げ、敢闘賞を獲得した。得意は左四つ、寄り、投げ。185センチ、130キロ。血液型O。家族は両親、兄、妹。愛称は「ハグワ」。