喜怒哀楽が詰まった東前頭14枚目翔猿(28=追手風)の新入幕場所が終わった。

勝てば優勝決定戦にもつれ込む正代戦。立ち合いから真っすぐ当たって攻め込み、もろ差しで土俵際まで追い詰めたが、逆転の突き落としを食らった。敗れて土俵下に降りる際、顔は引きつり目は充血。「泣いてはないけど、悔しい表情はしていたかもしれない」と言葉を振り絞った。

正攻法の相撲内容で11勝を挙げ、敢闘賞も受賞した。初黒星を喫した5日目の琴恵光戦で引く場面があり、けがへの恐怖心を覚え「引かないで前に出る相撲を心掛けた」。175センチと小柄ながら、立ち合いでは小細工なしに一直線。106年ぶりの新入幕優勝を逃したものの、敢闘精神あふれる取り口で会場を沸かせた。「たまたまだと思われないように、来場所はもっと稽古を積んでいきたい」。番付が大きく飛躍する11月場所を見据えた。