大関貴景勝(24=千賀ノ浦)が幕尻の志摩ノ海との1敗対決を制して2場所連続の12勝目、単独トップに浮上した。1月の初場所では似たような状況で幕尻の徳勝龍に敗れたが、今場所は出場最高位の威厳を示した。2年ぶり2度目の優勝に向けて、地元の兵庫・芦屋市など周囲の期待も上昇中。優勝の可能性は2敗の小結照ノ富士、志摩ノ海を含めた3人に絞られた。

   ◇   ◇   ◇

同じ轍(てつ)は踏まない。幕内で最も番付が低い相手の挑戦を、24歳の看板力士がはじき返した。立ち合いから貴景勝の鋭い出足は健在だった。土俵際で粘られ、押し返される場面でもいなしを交えてしのぎ、最後は右に開いてひと押し。1月の初場所では千秋楽で徳勝龍に敗れて「大関を名乗る資格がない」と悔やんだ。“再現”を阻止し「1月は自分が弱いから負けただけ。結局は勝つ人が強い。(幕尻との一番で心境に)変わったことはない」と平然としていた。

賜杯争いでリードを奪い、周囲の期待も高まっている。2年前の初優勝時などでパブリックビューイング(PV)の会場となった貴景勝の地元、兵庫・芦屋神社では優勝を祝福する縦40センチ、横1メートル60センチの横断幕を準備。コロナ禍で今場所のPVは中止となったが、担当者は「少しでも盛り上げられれば」と郷土力士の快挙を祈っている。

師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)はコロナ禍で関係者や報道陣を集める見通しは立っていない中でも、優勝時の記念撮影で使用するタイを発注した。先場所は刺身などで「きれいに食べた」と師匠は回想するが、今場所はいかに。

支えてくれる全ての存在に向けて、貴景勝は「(期待に)応えたいという気持ち。土俵に上がるのは自分。一生懸命頑張りたい」と気持ちを高めた。14日目は決定戦を含めて過去8勝9敗の関脇御嶽海。勝敗にかかわらず、優勝は千秋楽に決まる。【佐藤礼征】