綱とりに挑む大関貴景勝(24=常盤山)にいきなり土がついた。小結御嶽海との押し合いに屈して黒星発進。本割での対戦成績が9勝8敗と伯仲している実力者に、痛い敗戦を喫した。今場所から定年による名跡交換により、高砂親方から錦島親方(元大関朝潮)として、引き続き評論します。

  ◇   ◇   ◇

貴景勝が引いて墓穴を掘ってしまった。立ち合いから距離を取り押す形を作って、突っ張りの回転も悪くなかった。一見、流れは貴景勝ペースのように見える。ただ、相手にダメージを与えるほど押し込んでいなかった。御嶽海の辛抱強さや潜在的な柔軟性などもあるが押しが利いてない。御嶽海の引きに乗じて出たが、あれは流れの中で御嶽海が体勢を立て直そうとして引いたもの。実際に回り込んで立て直された一方、その後の貴景勝の引きは直線的だったし、密着されていたから残れなかった。

コロナ禍で条件はみな同じとは言え、いつもの押しではなかった。実力者に勝ってスタートすれば乗れるリズムに乗り損ねたが、今場所も優勝ラインは13勝あたりだろう。綱とり場所だが、力がなかったらやり直せばいい、というぐらいの気持ちで2日目に臨めるか。精神力も含め立て直しが試される。

(元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)