西前頭筆頭大栄翔(27=追手風)が、自身初の中日勝ち越しを決めた。平幕の輝に攻め込まれるも、土俵際での「とったり」で逆転。ただ1人の全勝を守った。大関正代と平幕の明瀬山が2敗に後退。8日目を終えて平幕力士が2差つけて単独トップに立つのは、1場所15日制が定着した49年夏場所以降初めて。埼玉県出身力士として初めての賜杯が、さらに近づいてきた。

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勢いに乗っているとは、まさにこのこと。大栄翔が追い込まれながらも星を拾った。立ち合いから自慢の突き押しで攻めるも、高身長の輝の突き押しに屈して後退。今場所初めて土俵際に追い込まれた。相手の左のど輪で上半身がのけ反り、万事休すかと思われたが、その左腕を手繰って土俵外に投げた。鮮やかな逆転に「焦らずに対応できてよかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

初日から役力士を総ナメにし、今場所初めてとなる平幕との対戦。「これまでと変わらずに押し相撲でいこうと思った」と気持ちに変化はなかった。輝とは18年九州場所以来の対戦だったが、貫いた自分の相撲で自身初の中日勝ち越し。「ストレート給金は初めて。すごく気持ちがいい。でも、ここで気を抜いてはいけない。1日1日集中したい」と引き締めた。

正代と明瀬山が2敗に後退したことで、早くも1敗勢が消えた。8日目を終えて平幕力士が2差つけて単独トップに立つのは、1場所15日制が定着して以降初めて。幕内後半戦の錦戸審判長(元関脇水戸泉)は「本当なら負けていたけど、うまく体を開いてかいなを返した。本当に調子がよさそう。このままいってくれれば面白い」と大栄翔の快進撃を期待した。

すでに三役以上との対戦を終えているだけに、日に日に優勝への期待が高まる。それでも、浮かれることはない。「1日に一番しかない。今は明日のことに集中するだけ」。無心で土俵に上がり続けた先に、悲願の賜杯が待っている。【佐々木隆史】