大関正代が2敗を守り、大栄翔とのマッチレースに持ち込んだ。3番連続物言いがつく際どい勝負から白星を拾った幸運を味方に、竜電をもろ差しから寄り切った。「昨日は土俵際で危なかった。今日はきっちり詰めもできた」。

前の相撲で大栄翔が勝ち、先に2敗を守った。それでも硬くなることなく、自分の相撲を貫いた。「その日の一番に集中している。(優勝を)経験している、していないは違うかもしれない」と優勝争いのライバルを意識して言った。

悔しさを経験した強みがある。1年前の初場所。徳勝龍との激しい優勝争いに敗れ、次点の13勝2敗に終わった。その支度部屋。徳勝龍に「おめでとうございます」と声をかけにいこうとしたが、空振り。「すげぇ、優勝うらやましい」と本音をはいた。

その経験をバネに昨年秋場所で初優勝を飾り、大関の座を射止めた。経験値では圧倒している自信がある。「まだ土俵際であわてているんで、しっかりしなければ。最後あと3番、取り切りたい。けがをしないように」。上位と対戦を残す正代が条件的には厳しい。積み重ねてきた経験値で最後に笑う。【実藤健一】