“荒れる春場所”で34歳のベテランが主役に躍り出るか。幕内在位53場所目の西前頭4枚目・妙義龍(境川)が、平幕でただ1人の勝ちっぱなし。玉鷲を絶妙なタイミングで引き落とし、昨年7月場所以来の4連勝。5場所連続横綱不在の混戦場所で、修羅場を生き抜いてきた経験を生かす。大関復帰を目指す関脇照ノ富士も4連勝で、全勝は早くも2人だけとなった。

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技能賞を5回獲得している妙義龍の技が光った。過去5勝10敗と苦手の玉鷲に攻められたが、絶妙なタイミングで引き落とし。「向こうは当たりが強いんで、負けないように踏み込んでいった」。無傷の4連勝は平幕でただ1人となった。

好調の要因を聞かれると「分からない。分かったら苦労しない」と苦笑い。ただ1つ。「体調管理して万全で初日を迎える。プロとしてやるべきことをやっている。今場所だけやなくて毎場所です」と言った。

兵庫県高砂市出身。高校から埼玉栄、日体大と関東圏だがバリバリの関西弁。本来は準ご当地の大阪場所だった。初日の取組後に「大阪に行きたかったけどしゃあないです。東京で一生懸命やっている姿を(関西のファンに)見てほしい」と話していた。その言葉を土俵の上で実践する。

三役を13場所務めている実力者。一方で幕内在位中に2度、十両に落ちながらはい上がる泥くさい経験もしている。「荒れる春場所」は大阪開催だけでなく、東京でも同じか。優勝争いを聞かれた妙義龍は「勘弁してください」。その上で「毎場所違う人が優勝しているのは目で見ている。そこは1番1番、勝っていかないと話にならないんで」。横綱が消えた寂しい土俵は生粋の関西人が盛り上げる。【実藤健一】