西前頭6枚目の阿武咲(25=阿武松)が、過去1勝5敗だった苦手の遠藤を押し出し、2敗を守って勝ち越しを決めた。3場所連続負け越していたが、今年初場所以来の勝ち越し。勢いに乗って11日目は大関貴景勝に挑む。横綱照ノ富士を1差で追う2敗は、西前頭10枚目の妙義龍と2人だけとなった。

   ◇   ◇   ◇

相撲巧者の遠藤に何もさせなかった。「しっかり前に出ようと思った」と阿武咲。言葉通り、立ち合いから中に入れない気迫で遠藤をはじき飛ばした。下から下からの押し相撲で、押し出した。今年初場所以来、4場所ぶりの勝ち越しを早々と10日目に決めた。「しっかり場所前からやってきたことが、結果に出てよかった」とかみしめた。

実力者だが、押し相撲ゆえの“ムラ”は否めない。昨年7月場所は、初日から13連敗の屈辱を経験した。そこから巻き返す力がある。3場所連続負け越し後の今場所も「やり返し」に満ちている。帰ってきた低い立ち合いからの力強い押し相撲が好成績につながる。

横綱照ノ富士の1差につけるが、「(優勝争いは)全く意識しない。1日一番、しっかりやりたいです」。ただ、上位との対戦に引き上げられる可能性は大。11日目も大関貴景勝と組まれた。「しっかりやるだけです」と構える気持ちに変わりはない。【実藤健一】