日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会(横審)の定例会合が、大相撲九州場所千秋楽から一夜明けた29日、東京・両国国技館で開かれた。

矢野弘典委員長(産業雇用安定センター会長)が報道陣の代表取材に応じ、一人横綱として2場所連続優勝を、自身初の全勝で遂げた横綱照ノ富士(29=伊勢ケ浜)について「横綱らしい相撲を展開した。日頃の精進が実ったのではないかと思う。相当、強い自覚を持っていると感じている。強いだけではなく品格も含めて相撲界のリーダーになってほしい」と期待を込めた。相撲内容はもちろん、優勝力士インタビューなどからも「発言を聞いていると浮ついたところがなくて(横綱の)立場にふさわしい覚悟が出来ている。これからも大いに期待したい」「飾らない人柄なのでしょう。一生懸命、努力して良い結果を出したいということで相撲っぷりも正々堂々としていた」など、品格面でもお墨付きを与えた。新年に向けても「横綱は力士の象徴的な存在。強さと品格を備えて模範となって、みんなを引っ張って行ってほしい」と期待した。

一方で、追随する後続力士の力量不足を指摘する声が委員からも漏れたようで、矢野委員長は「追い掛ける方が、もう一つだった。これから伸びていく力士たちには、もっと強くなってほしい」と注文。照ノ富士という、大きく立ちはだかる存在はあるが「大きな壁に向かって全身全霊を込めてぶつかって、気迫を持って取り組んでほしい。何人かは目の色変えて、いい相撲を取っていました。三役に名を連ねていない何人かは(今後が)楽しみ」と期待したが、具体的な個人名は、委員からは出なかったという。

また九州場所の総括とは別に、横審として日本相撲協会に対し、出稽古の早期の解禁を要望した。「(コロナの感染状況が)これからどうなるか分かりませんが、出稽古を前向きに考えたらどうか。管理体制の行き届いた部屋から、同様に行き届いた部屋へ出稽古しても支障はないのではと思います。強くなるためには同格か、それ以上の相手との稽古が大事だと、聞いた事があります。その機会がないのは力士にとって、かわいそうだなと思います」と矢野委員長。これに対し同協会の八角理事長(元横綱北勝海)からは「専門家の意見をよく聞いて判断したい」という返答があったという。矢野委員長は「コロナという正体の分からない相手と闘っているので無理は出来ない。すぐに、ということではなく、なるべく早く実現するようにしてください、とお願いしました」と重ねて説明した。引退した元横綱白鵬の間垣親方に対しては「親方として後進の指導の面で、しっかりやってほしい」と期待した。