103年ぶりの偉業に挑む横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)が、優勝争いのトップに並んだ。東前頭5枚目阿武咲を盤石の右四つで寄りきり9勝目。勝ちっ放しだった関脇御嶽海が初黒星を喫したため、1敗で並走する形となった。1919年の栃木山以来、103年ぶりとなる新横綱から3場所連続優勝に向けて終盤5日間も突っ走る。平幕の阿炎と宝富士が勝ち越しを決めて2敗を守った。

まわしを取った時点で照ノ富士の相撲だった。鋭い踏み込みで左前まわしに手がかかり、阿武咲の出足を止めた。1度外れたが再度左を取ると、右もねじ込んで盤石。慎重に腰を落として体を寄せた。

初黒星を喫した6日目から、全勝の御嶽海を1差で追いかけ続けた。常に先頭を走り、連覇を果たした直近2場所とは異なる展開だが「そういうことは全く意識していないので。自分の相撲を15日間取りきって終わらせることしか考えていない」。この日は2番前に御嶽海に土がついた中でも「自分の相撲に集中していただけなので」と気持ちはぶれなかった。

師匠は最高位の責任を求める。3敗勢を含めると8人が優勝戦線に残る、やや混戦模様の展開。土俵下で取組を見守った師匠で幕内後半戦の伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)は「まだまだ(展開は)分からないが、横綱がしっかり責任を果たさないといけない」と語気を強めた。

記録が取り沙汰される中でも平常心を貫く。6日目には昨年秋場所から続いた連勝が「23」で途絶えたが「そういうことにこだわっているわけじゃない」と気持ちを切り替えた。連覇を果たした先場所の優勝インタビューでは、昨年に続く年間4度の優勝を目標に掲げた。貴景勝が途中休場、正代が不振で、看板力士としての責任が一層求められる今場所。「残り集中して頑張っていきたい」。無心の先に、103年ぶりの快挙が待っている。【佐藤礼征】