相撲巧者の遠藤の、さらにその上を若隆景は行きました。相手をよく見て、攻めも早い。右のおっつけをフェイントのように見せておいてからの、左からの攻めも効果的でした。気持ち的にも落ち着いていましたね。一度、右からの出し投げで遠藤がクルリと回る場面がありました。そこから遠藤が反撃することも予測できていたからこそ、落ち着いて足をそろえずに対応できました。前日の玉鷲戦の敗因として、若隆景が前に出るとき両足がそろってしまったことがあります。左、右、左…とそろえずに出れば、おっつけも楽になります。1日たってどうかな、と思って見ていましたが、足の運びも問題はなかったと思います。

そしてもう1つ。遠藤との違いは両者とも腰が柔軟に動いているように見えますが、ブレがあるかないかの違いで若隆景にはブレがありません。その違いも出た一番でした。1勝1敗で迎えたこの遠藤戦は、ある意味、若隆景にとって勝って乗り越えなければならない試練の一番だと思っていました。もちろん大関を見据えてのことです。その足固めのためには前半戦は4勝1敗で乗り切ることが必要です。もちろん最後まで優勝戦線に残ることを求めたいですね。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)

☆遠藤との「相撲巧者」対決を制した若隆景 下から相撲をとれたと思います。自分の相撲に集中して、1日一番しっかり相撲をとるだけです。