照ノ富士(30=伊勢ケ浜)が、横綱たるものを見せつけた。初日から大関3連破で勢いにのる西前頭2枚目の琴ノ若と対戦。立ち合いから攻めの姿勢で右四つに組み止め、最後は左上手を引く盤石の形で寄り切った。休場明けで初日黒星と不安のスタートも2日目から3連勝と威厳を取り戻してきた。前日総崩れの3大関は一転して全員が白星。全勝は平幕の翔猿、碧山、一山本の3人となった。

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横綱の巨大な壁が立ちふさがった。上位陣に波乱が続く土俵で、初日から3日連続で大関撃破と急伸してきたホープ琴ノ若に、照ノ富士は「横綱」の強さを全身でたたき込んだ。

立ち合いから攻めの姿勢だった。鋭い踏み込みで右四つに組み止めると、その後も攻め手を止めない。一気に圧力をかけて、左上手を引きつけると24歳は何もできない。堂々の寄り切りで勢いを完封した。

「落ち着いてやれたかなと思います。(前に出る圧力)よかったと思います。自分の相撲を取りきるのは毎日同じ。特に変わってないです」

冷静な言葉とは裏腹に心は躍っていた。横綱として、「勢いある若手が出てきてほしい」と願っていた。先場所も優勝を争い、11勝の好成績をあげた琴ノ若は角界の将来を担う存在でもある。「勢いのある相手とやるのは自分も楽しいんで。力つけてきている若い相手とやるのは、こっちも燃えるものありますね。そういう部分でしっかり、力を出し切れたと思う。自分もまだ若いんでね」と充実感を示した。

番付社会の角界の頂点に君臨する横綱は、自身の強さを示すだけでなく、後進を育てる務めもある。照ノ富士はしっかり理解する。「(壁になる意識は)それももちろんあるが、勢いある相手とやるとこっちも勢いをもらうというか、よしやってやるという気持ちになる。どんどんそんな力士が出てきてほしいですね」と言った。

先場所は右かかと、左膝を痛めて途中休場。再出発の今場所も横綱昇進後、初めて初日に黒星と不安を抱えた。そんな横綱の状態が波及するように上位陣が不安定な荒れる場所。それを鎮めたのも横綱だった。

4日目で全勝は平幕の3人だけ。混沌(こんとん)とした場所で、照ノ富士がさすがの存在感を示してきた。【実藤健一】

 

☆4連勝の碧山 たまたま残れました。体は動いているんですけど、相撲内容は今日はよくないですね。勝ったのはよかったですけど、明日はこうならないよう気をつけます。

★大栄翔にはたき込まれて2敗目の若隆景 先に前に出られたんで。そこですかね。下から、そういう意識だけでしたが。(先場所との違い)特にないですね。しっかり自分の相撲をとるだけ。