住宅街にたたずむ都内の斎場には、恰幅(かっぷく)の良い男たちの集団が最後の別れを告げようと駆けつけた。今月5日、日大の元理事長の田中英寿氏(75)の妻征子さんが死去し、11日、都内で通夜・告別式がしめやかに営まれた。同大相撲部から角界入りした現役力士、親方らが多数参列。故人の相撲界へ果たした多大な貢献がうかがえた。

征子さんは都内で飲食店「ちゃんこ料理たなか」を経営しながら、同大相撲部監督を務めた田中氏を公私で支えた。相撲部に住宅を提供したり、食事の面倒をみたり。親元を離れた学生にとって母親代わりの存在を担った。通夜に参列した1人の関取は「いろいろお世話になったので、これから頑張りたいです」と感謝の思いを口にした。他の力士、親方衆も同様の言葉が漏れた。

その一方で、同大関係者の参列はほとんど見られなかった。夫の田中氏は昨年11月に所得税法違反容疑で逮捕され、同年12月に日大理事長を辞任し、さらに今年4月、東京地裁の有罪判決が確定した。田中氏の一連の脱税事件などで日大は「決別」を宣言し、今回の葬儀などに関しても、相撲部関係者以外の職員らには参列しないよう通告。事前の言い伝え通り、参列者の顔ぶれの多くが相撲関係者にとどまった。【平山連】