大相撲九州場所で初優勝を果たした平幕の阿炎(28=錣山)が千秋楽から一夜明けた28日、オンライン会見で「師匠に言われた『一番集中』を守ってきたからこそ」と今場所での勝因を述べた。この1年について「応援してくださっている方々に自分の頑張っている姿を見せられたらいいなと思っていたので、その気持ちが結果に出た」と語り、「もっと気持ちの強い相撲を見せたい」と来年へさらなる飛躍を誓った。

阿炎は右肘と左足首を手術して秋場所を全休。休場明けながら今場所では、終盤戦まで白星を先行させて優勝争いに名を連ねた。千秋楽の本割では単独首位だった高安を突き倒し、大関貴景勝、高安と12勝3敗で並んだ。優勝決定ともえ戦で連勝し、優勝を決めた。その直後は頭が真っ白になるほど放心したが、冷静になって真っ先に浮かんだのは笑っている師匠の顔だった。

体調不良の入院中の錣山親方(元関脇寺尾)は今場所休場して九州に入らなかった。師匠から「一番に集中して相撲をとることが大事だ」というメールをもらい、土俵に上がる前に意識してきた。「入門してからよく言えば『やんちゃ』だったので、心配や迷惑ばかりかけてきた。自分の両親もお世話になっているので、一生頭が上がりません。稽古以外は父親みたいな存在で、若いころは付き合っている女性の話もしました。入門してからずっと師匠を超えることを目標にしていたけど、また1歩進めたのかな」と師匠への愛があふれた。初優勝で恩返しとなった。

携帯電話には祝福のメッセージが相次ぐ。「過去最多の200(件)くらいきて、すごく喜んでもらえた。家族のグループラインでは『自慢だよ』『泣いちゃったよ』『心臓が持たない』とか連絡がありました」と興奮は冷めやらない様子。支えてくれた家族との再会も待ち遠しい。「妻にも心配をかけた。早く会いたいな」と話していた。【平山連】