日本相撲協会は、後輩力士への暴力行為により、幕内北青鵬に引退勧告処分を下した。後輩力士への日常的な暴力行為が問題視された北青鵬は22日に引退届を提出。理事会は受理した。

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遅かれ早かれ、北青鵬の素行の悪さは、明るみに出ていたのかもしれない。臨時理事会の内容を発表した文書では、暴行被害を受けた2力士と、他に所属する力士の多くの声として「反省の態度は認められず、北青鵬が宮城野部屋に残ることになれば、必ず暴行を繰り返す」と、懸念していたという。なぜ改善される気配がないのか。それは、師匠が部屋にいない時間が多いことが原因だ。

師匠と弟子は、1つ屋根の下で寝食をともにする。時には親子以上に深い絆を築くよう努めることが、相撲界の伝統だった。今も大多数を占める。現在の宮城野部屋は、新たに部屋を建てるまでの仮住まいとして旧東関部屋を利用。本来は師匠が住む場所に、現役力士とは無縁の大家として元関脇高見山が住んでいる。宮城野親方は通いで指導。午後から翌朝の稽古まで弟子だけの空間だった。

宮城野親方は現役時代に3度の処分歴があった。21年秋場所後に現役引退、親方となるに際しても「10年間は部屋付きの親方として親方業を習熟すべき」などの厳しい声があった。そこで「大相撲の伝統文化や相撲道の精神、協会の規則、ルール、マナー、相撲界の習わし、しきたりを守り、そこから逸脱した言動を行わないこと」などと記された誓約書に署名した。“親子”が別々に暮らす現状がこれに反し、厳罰を科された。何よりも「どの子もわが子」の心がなければ親とはいえない。【高田文太】