16日公開の「名探偵コナン 緋色の弾丸」は劇場版24作目となる。

コロナ禍での1年延期となったが、舞台は世界最大のスポーツの祭典「WSG」が開催される東京であり、五輪延期に重なって今回もタイムリーな作品となった。

第20作「純黒の悪夢」で劇場版に本格的に登場したFBIの赤井秀一が5年ぶりにメインキャラクターとして登場。その妹で毛利蘭の同級生でもある真純も7年ぶりの顔見せでキーパースンとなり、赤井ファミリー集結がコナン・ファンの心をくすぐる。

WSG開会式の巨大な会場に最高時速1000キロの超電導リニアと仕掛けの壮大さも期待を裏切らない。ここで進行する連続拉致事件は15年前のボストンの事件と連動していて、劇場版ならではのスケール感でこれでもかとストーリーは急転する。

7年前になるが、配給元の発注で「コナン新聞」を製作したことがある。タブロイド版の全ページがコナン情報で、その中には高山みなみ(コナン)山崎和佳奈(蘭)小山力也(小五郎)のメイン声優3人の対談があった。

当時で高山と山崎は18年、小山は4年半のキャラクターとの付き合いだったから、今では2人は25年、途中参加の小山も10年を越えた。

こちらは当たり前のように見ているが、対談では舞台裏のさまざまな工夫や努力を聞いた。

山崎は中国拳法やダンスのレッスンを重ねていた。「劇中で戦うことって多いじゃないですか。自分の中で臨場感が持てるように、体を動かさせるように始めました。ト書きにあるような動きを自分でやってみるんですよ」と言う。

小山は「最初から多彩なコナンに驚いた。高校生の時と高校生がわざと子どもを演じている時の声、そして蘭ちゃんの前で素直に子どもになってしまう時の違いを聞いて、これはスゴイと」と高山のメリハリに感服していた。

その高山は「劇場版だと休憩時間を挟んで12時間くらいかかります。アクションシーンでは脳の指令で筋肉が動いてしまうから、終わった後には筋肉痛がすごいです。寝る前に体中に湿布を貼るハメになります」と明かした。

高速リニアの中での息詰まる戦いがある今回はさぞかし、湿布の枚数が多かったと思う。

当時の脚本は「太陽にほえろ!」でデビューした古内一成さんがメインとなり、伝説のドラマに倣って刑事ドラマの王道感が随所に感じられた。今回の櫻井武晴さんは13年の「絶海の探偵」以来、劇場版コナンは5作目。こちらも「相棒」や「科捜研の女」を数多く手掛けた人で、事件の裏側の描写はきめ細かい。

そして原作者青山剛昌さんの劇場版への独特なこだわりがあるからだろう。今回も終盤の破壊スケールは実写ではまねのできないものになっている。想像はしていても、それを大きく越えてくるのがこのシリーズだ。

長続きするものにはやはりわけがある。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)