中国の王朝が明から清に代わった17世紀、その影響下にあった李氏朝鮮は揺れている。清の人質となっていた王子夫妻の帰国は、後継争いの火種となる。

「梟 フクロウ」(2月9日公開)は、そんな王宮で働くことになった盲目の鍼医が王子の暗殺を「目撃」してしまうサスペンススリラーだ。

病弱な弟を養うため、懸命に働く鍼医のギョンスは、宮廷医にその腕を見込まれ王宮に職を得る。策略が渦巻き、見てはいけないものだらけの宮中では盲目が重宝され、ギョンスは王一族の寝所まで出入りを許されるようになる。

真っすぐな性格の王子夫妻に信頼され、その長男が自身の弟と同い年と知って親近感も覚えるが、ある夜、彼は王子が毒殺される決定的な瞬間に立ち会ってしまい、嫌疑をかけられてしまう。

実は暗闇の中に限っておぼろげな視力を持つギョンスは実行犯を目撃しており、ひそかにその黒幕の「捜査」を進めるが…。

51歳のアン・テジン監督はこれがデビュー作。暗がりの多い作品の巧みな照明は、豊富な助監督経験のたまものかもしれない。

撮影直前までスタッフやキャストの意見を聞きながら手直しを続けたという脚本は緻密でメリハリが効き、いつの間にかギョンスに感情移入させられる。

彼が記憶する宮中の作りがこちらの頭の中でも再現され、その鼓動に共振してスリルが味わえる。ハリを「武器」にする場面には「必殺仕掛人」の藤枝梅安が重なった。

主演は「タクシー運転手」(17年)の大学生役が印象的だったリュ・ジョンヨル。目線を動かさずにリアルに盲目を演じている。

王役のユ・へジンが今回も熱演だ。この人は何をやってもうまいが、腹の奥を少しずつ見せる感じや、感情を爆発させるシーンに思わず見入ってしまった。【相原斎】