第1作から2年半、「デューン 砂の惑星PART2」が3月15日から公開される。

1965年に発表されたフランク・ハーバートのSF大河小説は、スケールのあまりの大きさが先人映像作家たちを苦しめ、傑作と呼べる作品は生まれなかった。「メッセージ」(16年)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、高層ビルサイズのサンドワーム(砂虫)など、視覚的な力技でPART1同様に魅せてくれる。

豊かな資源に恵まれ、そこを支配する者が全宇宙を制するといわれる惑星デューンを巡る物語。皇帝とハルコネン家の陰謀によって父レト公爵を殺されたポール(ティモシー・シャラメ)が、今作では先住民のフレメンとともに反撃に出る。

広大な砂漠のロケや巨大なセット、そしてVFX…それぞれを最大限まで活用しながら、その接ぎ目は見えないように巧みに融合されている。ヴィルヌーヴ監督の力技による特異な世界観の再現に何度も息をのむ。

砂漠の民フレメンの生活や闘いは、その具体的な描写に説明抜きの説得力があり、「水」の重み、その神秘の力にもいつの間にか納得してしまう。イスラム世界をほうふつとさせる砂漠の民の中で、よそ者の白人ポールがいつの間にか「救世主」となっていく過程がそこに重なる。「アラビアのロレンス」(63年)を思い出す。

こちらも細密に再現されるハルコネン側の「ハイテク」とのコントラストも見事だが、新旧の演技巧者がそんな大舞台に負けないくらいそれぞれにキャラを立てて、ドラマ部分にも見どころが多い。

ポールの恋人としてスポットが当たるフレメンのチャニを演じるゼンデイヤは闘う姿がさまになり、彼への思いをにじませる表情も魅力的だ。

ポールの母親レディ・ジェシカ役のレベッカ・ファーガソンはその「野心」を怖いくらいに演じている。フレメン部族長スティルガー役にはハビエル・バルデム、ハルコネン家の跡継ぎで敵役のフェイドは「エルヴィス」のオースティン・バトラー…どれもこの人しかいないだろうと思わせる配役で、日本で言えばNHK大河ドラマのように、それぞれの気合が感じられる。

砂虫の高速移動にサーフィンのように乗る描写や、フレメンがゲリラ戦で巨大兵器を破壊するシーンは圧巻。ヴィルヌーヴ監督独特の抑揚を付けた音響も効いている。

「スター・ウォーズ」「エイリアン」「ターミネーター」「ダイ・ハード」…素材がちょうど良い感じに練りあがるのか、人気シリーズでは不思議とパート2が「最高傑作」となるが、この「デューン」もそうなる気がする。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)