世界大恐慌直後の1933年のニューヨークを舞台に誰もが家や仕事を失って生きる希望を見失う中、いつも元気で前向きな孤児アニーが主人公のミュージカル「アニー」。1977年にブロードウェイで初演されて以来、1983年に終演するまでブロードウェイ史上最長ロングランを記録した日本を含む世界中で愛され続けるミュージカルとして今も人気です。そんな「アニー」が、今月27日から29日までロサンゼルスにある野外劇場ハリウッド・ボウルで上演され、日本生まれのリンズ乃愛(ノエ)さん(11)が孤児の1人ジュライ役に大抜擢されました。「春のめざめ」リバイバル公演を演出して16年にトニー賞にノミネートされたマイケル・アーデン監督を始め、オールスターキャストで話題となった「アニー」に出演した乃愛さんに話を聞きました。

 横浜で生まれ、4歳の時にアメリカに引っ越してきた乃愛さんは、通っている幼稚園から高校まで一貫教育の公立学校テメキュラ・プレパラトリー・スクールのミュージカルに子役として出演したのが、初めての舞台だったと言います。

 「小学校3年生の時に高校生のミュージカ『オリバー』に孤児役で出演したのが初めてのミュージカルでしたが、それからは機会があれば子役で出演しています。2016年は『ターザン』でヤングターザンを、去年は『ボニーとクライド』で若い時のボニー役を演じました。昨年は地元(カリフォルニア州)テメキュラにある劇団ファイン・アート・ネットワーク・シアター・カンパニーで上演した『アニー』のオーデョションを受け、アニー役にも選ばれました」

 今舞台では700人の中からオーデョションで孤児役6人のうちの1人に大抜擢。一流キャストたちと共に初めての大舞台に立ちました。

 「昨年出演した『アニー』のキャストから『今度ハリウッド・ボウルでアニーをやるよ』と教えてもらったことがきっかけでした。母がオーデョション情報を探してくれて、誰でも受けられるオープンオーデョションを受けに行きました。オーデョションが受けられるだけでラッキーという気持ちで朝4時から並びましたが、結果は700人の中から17人残った3次オーデョションを経て見事に最終選考の6人に選ばれることができました。本当にラッキーでした」

 有名アーティストも多数出演する夢の舞台ハリウッド・ボウルで3日間の公演を終えて、新たな目標も生まれたと言います。

 「夢みたいな3日間でした。緊張感もありましたが、同時にワクワクした気持ちでした。舞台の上からは大観衆を感じながらも直接観客が見えないので、これまでの舞台と同じ気持ちで臨むことができたと思います。アーデンさんを始め、この世界のトップで活躍する人たちと一緒に舞台に立てたことは本当に素晴らしい経験でした。彼らからたくさんのことを学ぶことができ、成功するために必要なことを聞くこともできました。常に『思いやり』『ポジティブ』『ハードワーキング』の気持ちを持ちながらたくさんのことを学ぶことが大切であると教えてもらいました。将来の夢は役者として成功することです。(ディズニー映画『アナと雪の女王』で劇中歌を披露し、『レント』などのミュージカルで知られる)イディナ・メンゼルや(『ミス・サイゴン』などで知られるフィリピン出身の)レア・サロンガは素晴らしい女優で自分もしっかり持っている憧れの存在です。この舞台を経験したことで、ブロードウェイやプロの役者になるチャンスをより明確なビジョンとして持つことができたと思います。目標を設定し、それに向かってポジティブに一生懸命努力をしていればどんなことでもできます。でも、同時に自分自身の人生を生き、楽しむことも大切です」

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)