17日間に渡って熱戦を繰り広げた東京オリンピック(五輪)は、8日に閉会しました。新型コロナウイルスの影響によって1年延期され、史上初めて無観客となるなど異例ずくめの大会でしたが、様々なドラマが生まれ、新たなスターも誕生しました。そんな東京五輪を改めて振り返り、米国で注目を集めた選手たちを紹介します。

体操女子個人総合で優勝したスニサ・リー(ロイター)
体操女子個人総合で優勝したスニサ・リー(ロイター)

●体操女子米国代表スニサ・リー

2016年リオデジャネイロ五輪で4冠を達成し、連覇が期待されていた絶対王者のシモーネ・バイルズが、メンタルヘルスを理由に途中棄権したことで一躍脚光を浴びたのが、18歳のスニサ・リーでした。バイルズが途中棄権した個人総合でプレッシャーを見事にはねのけ金メダルを獲得したリーは、中国や東南アジアの少数民族「モン族」系として初の栄光を手にしました。その後の種目別でも段違い平行棒で銅メダルに輝き、トップスターに躍り出たのです。

ラオスからの移民としてアメリカに渡った両親の元で生まれた育ったリーは、貧しい生活の中で父親が自宅の庭に手作りした木製の平均台で子供の頃から練習し、親子二人三脚で獲得した金メダルはまさにアメリカンドリーム。そんな父親は2019年にはしごから転落する事故で半身不随になり、親族が新型コロナで相次いで亡くなる不幸にも見舞われたリーは、自らも足を骨折して一度は五輪をあきらめようとしたこともあったといいます。そんな逆境を乗り越えて見事に期待に応え、「ミリオンダラーベイビー」として広告業界からも熱い視線を集めています。

●男子高飛び込み英国代表トーマス・デーリー

シンクロ高飛び込みで金メダルに輝くなど、金と銅の2つのメダルを獲得したトーマス・デーリーは、競技での活躍はもちろんですが、ファンをくぎ付けにしたのは演技の合間や応援席で黙々と編み物をする姿でした。

7月27日には自身のインスタグラムに手編みの金メダル入れを投稿し、片面がユニオンジャックで、もう片面が日本の国旗の柄になっていることに「かわいい」「上手」とフォロワーも大絶賛。さらに今月5日には「東京に来て何か思い出になるものを作りたいと思った」とコメントを添え、右胸に「東京」の文字がデザインされ、左腕にはユニオンジャック、背中には英国選手団を意味する「TEAM GB」の文字と五輪マーク、チームロゴがデザインされたカーディガンを着用した動画を投稿し、「編み物王子」にハマる人が続出しました。

●陸上女子米国代表アリソン・フェリックス

1984年ロサンゼルス五輪から4大会連続で9つの金メダルと銀メダル1つを獲得している陸上界のスーパースター、カール・ルイスを上回る、米国陸上史上最多となる11のメダル(金7、銀3、銅1)を獲得したアリソン・フェニックスも、全米を熱狂させた一人です。

35歳のフェリックスは18年に愛娘を出産しており、ママになっても世界のトップレベルで戦える走りに多くの人が感銘を受けました。2位に3秒68の差をつけて7連覇を達成し、ルイス超えを成し遂げた7日の1600メートルリレーは、多くの人がその走りにくぎ付けになったことは言うまでもありません。

スケートボード女子ストリート予選で演技する西矢(7月26日撮影)
スケートボード女子ストリート予選で演技する西矢(7月26日撮影)

●スケートボード女子ストリート西矢椛

史上最年少で金メダルを獲得した13歳の西矢椛は、AFP通信が東京五輪でブレークした選手5人に選ぶなど次世代の若きスターとして脚光を浴びました。今大会から五輪新種目として採用されたスケートボードで、日本人が表彰台をほぼ独占したことも大きな話題になり、男子王者となった堀米雄斗や、女子パークで銅メダルを獲得した日本人の母を持つスカイ・ブラウンらも注目を集めています。

女子800メートルで優勝したアシング・ムー(8月3日撮影)
女子800メートルで優勝したアシング・ムー(8月3日撮影)

●陸上女子アシング・ムー

女子800メートルで1968年メキシコシティー五輪以来53年ぶりに米国に金メダルをもたらした19歳の新星アシング・ムーは、20年前にスーダンから米国に渡った両親から生まれた移民の子供です。スタートからフィニッシュまで先頭を守り切った走りに多くの陸上ファンが熱狂し、3年後のパリ五輪でも期待が持たれています。陸上では他にも女子円盤投げで金メダルを獲得したバラリー・オールマンも、元プロダンサーという肩書から注目を集めていました。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)