日本では愛知県で開催された野外音楽イベントで新型コロナウイルス感染対策が徹底されず、酒類の提供や大勢の来場者で密な状態になっていたことが批判されていますが、ここアメリカではワクチン接種証明書または検査での陰性証明書の提示を、すべての観客に求めた上で100%の観客を動員して開催する野外フェスが増えています。

それでも、感染力が強いデルタ株の蔓延防止には不十分で、もっと厳しい制限が必要だとする専門家の意見も出ており、コロナ禍での大型イベントの開催はまだまだ課題も多そうです。

コロナ禍で昨年は3月以降ほとんどの大型イベントが中止や延期になっていたアメリカも、ワクチン接種が進んだ今夏は再び野外フェスが各地で復活しており、数万人規模の観客を動員するイベントも開催済みです。ただ、その多くで観客に対してワクチン接種の証明か検査での陰性証明の提示を義務づけており、一部ではマスク着用も義務化されています。

7月29日から4日間にわたってシカゴで行われたロック・フェスティバル「ロラパルザ」の1日当たりの観客数はなんと10万人で、会場はコロナ禍以前と変わらぬ密状態だったことがメディアでも伝えられています。ただし、参加するにはフェスの2週間前までにワクチン接種を完了しているか、72時間以内に検査を受けて陰性であることを証明する必要があり、4日間通じて参加するワクチン未接種者は、途中で2度目の検査を受ける必要があります。

関係者によると、およそ9割がワクチン接種済みの観客で、残り1割のうち数百人が必要な陰性証明を提示できず入場が認められなかったそうです。一方で会場内ではソーシャルディスタンスやマスク着用の義務化といった規制はもうけられていませんでした。また、今月21日に、新型コロナウイルスの感染拡大によって深刻な打撃を受けたニューヨークの復活を願いセントラルパークで開催された野外コンサートでも、6万人の観客に対し同様の措置が取られています。

8月21日、ニューヨークのセントラルパークで行われたコンサートで、ワクチン接種証明をスタッフに見せる観客(AP)
8月21日、ニューヨークのセントラルパークで行われたコンサートで、ワクチン接種証明をスタッフに見せる観客(AP)

一方で、参加する若者に接種を促すための様々な取り組みも行われています。5月にコロラド州デンバーのレッド・ロックス・アンフィシアターで行われたフェスでは、会場内にワクチン接種場を設置し、希望する観客に1回の接種で完了するジョンソンエンドジョンソン製のワクチンを提供。接種者には記念Tシャツと割引券などがプレゼントされたといいます。同会場ではコンサートの主催者ごとにワクチン接種の義務化ルールは異なるものの、まだ接種していない若者に接種を促す目的で、一部イベントでのワクチン接種を提供することにしたようです。

全米の中でもワクチン接種率が低いことが指摘されているテキサス州では、新たにワクチン接種登録を行った先着1000人に10月1日から3日間にわたって行われる音楽フェス「オースティン・シティ・リミッツ・ミュージック・フェスティバル」の無料1日券を配布することを発表。ビリー・アイリッシュやマイリー・サイリスら人気アーティストが出場を予定しており、125ドルから550ドルで販売されたチケットはすでに完売しているため、プラチナチケットして話題になっています。このフェスでも参加者にはワクチン接種証明書または検査での陰性証明書の提示が義務づけられています。

大規模イベントを巡っては、イギリスで7月21日から24日にかけて開催された野外フェスで1日当たりおよそ3万7000人が参加し、その後に1000人以上が新型コロナの陽性反応を示したことが政府の統計で判明しています。参加者は全員がワクチン接種を完了しているか検査での陰性証明を提示しており、ブレークスルー感染が起きていたことがうかがえます。

また、ロラパルザでもステージの前にマスクを着用せずに多くの参加者が詰めかけて密集する様子が公開されると、「恐ろしい光景」と専門家らが反応し、シカゴの保健当局は批判を受けて後半2日間は屋内スペースでのマスク着用を義務づける措置をとったと伝えられています。このイベントではクラスターは起こらなかったもののブレークスルー感染が広がる中、今後の大型イベントのあり方に注目が集まっています。【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)