アナウンサー試験で行われるカメラテストや音声テストの対策には、アナウンススクールに行くのがおすすめ、と前回書きました。私がアナウンススクールに行き始めたのは大学2年の秋。ずっと将来に不安を抱えていた私に、霧が晴れるような授業がありました。

TBSテレビインフォメーションの収録で、「いきなり!ステーキ」について、株式会社ペッパーフードサービス代表取締役・一瀬邦夫氏にインタビューした五戸。7月15日から「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」などでオンエア(2017年6月)
TBSテレビインフォメーションの収録で、「いきなり!ステーキ」について、株式会社ペッパーフードサービス代表取締役・一瀬邦夫氏にインタビューした五戸。7月15日から「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」などでオンエア(2017年6月)

トーク編29「アナウンススクールで教わったこと」~就活④~

 【前回までのあらすじ】ダイエット編と並行して連載中のトーク編。アイドルやアーティストに行っているトークレッスンの内容を公開するとともに、アナウンサーを目指す学生に向けてのメッセージをお届け。大学3年生はそろそろ本格的に就活準備をするのがおすすめです。

アナスクに出会うきっかけ

 アナウンススクール、略してアナスク。アナウンサー職で内定をとる人が全員スクールに行っているかといえばそうではないですが、基本的には実際にアナウンサーとして働いている方が講師をしているので、OB・OG訪問としても意味のあることだと思います。

 私は当初、実は「絶対にアナウンサーになりたい」と思って通い始めたのではありませんでした。なんとなくマスコミに就職することに憧れ、「メディアの内定をとる人はみんなアナウンススクールに行っているらしい」という噂を耳にし、根拠のない都市伝説でしたが鵜呑みにして、ネットで調べて一番上に出てきたTBSアナウンススクールが、ちょうど新入生募集中だったので、試しに行ってみようと思ったのでした。

「いきなり!ステーキ」インタビュー収録の模様
「いきなり!ステーキ」インタビュー収録の模様

わからなくなった“将来の夢”

 子供の頃から人前に出るのは好きなタイプでした。小学生の頃に入った演劇部で、同級生よりうまいんじゃないかと思い上がり、将来の夢は女優だと掲げて、大学生になるとミュージカルサークルに入りました。

 しかし、自分の出演した舞台の記録映像を見てゾッとしました。歌は下手だし演技なんてもってのほか。自分に、伸び代も才能も感じられませんでした。見に来てくれた友人にチケット代を払わせたことを申し訳なく思い、自己満足に自己嫌悪を感じていました。自分は何になれるのか、何になりたいのか、わからなくなってしまい、鬱々としていました。

 マスコミに就職することに憧れたのは、エンターテインメントの世界で、自己満足でない働き方をすることができるのではないかと想像したからです。自分がアナウンサーになれるとは思っていなかったので、AD、あわよくば記者になれれば、なんていう浅はかなきっかけでした。

「レコチョク上半期ランキング2017 新人アーティストランキング」1位に輝いたBeverlyさんの表彰式で司会を務めた五戸(左)。中央はレコチョクキャラクター「レコチョクマ」、右がBeverlyさん(2017年7月)
「レコチョク上半期ランキング2017 新人アーティストランキング」1位に輝いたBeverlyさんの表彰式で司会を務めた五戸(左)。中央はレコチョクキャラクター「レコチョクマ」、右がBeverlyさん(2017年7月)

最初に教わった「伝える」「伝わる」の違い

 アナウンススクールで最初に教わったのは「伝える」ことと「伝わる」ことの違いです。いくら伝えても、伝わらないと意味がない。アナウンサーという職業は、ただ“伝える仕事”ではなく、“伝わるように伝える仕事”だと習ったんです。

 なんて、人の役に立つ仕事だろうと感服しました。ニュースが伝わるように伝える、天気が伝わるように伝える、時には災害情報が伝わるように伝える…そのために訓練する…。世の中に必要とされた専門職だと、魅力を感じました。

霧が晴れた「アナウンサーになりたい」

 言ってしまえば、本当に伝わっているかどうかなんてわからないし、「人の役に立つ」なんて大義名分も、「人の役に立つことで感謝されたい」というエゴなのかもしれないですが、少なくとも私には、今までモヤモヤしていた未来が、パーっと霧が晴れたように「アナウンサーになりたい」と強く思う動機になりました。

 結果、ニッポン放送でアナウンサー職に就くことができたのですが、お聞き苦しくなくインフォメーションを読めるようになるまで随分かかってしまったし、向いていたのかどうかは疑問が残りますが、それでも、経験を重ねれば重ねる程、アナウンサーという仕事に誇りを感じ、マイクの前にいることは自分にとって生きている証のように思うようになりました。今はフリーアナウンサーとして、声が出る限り続けたいと思っています。

表彰式後、Beverlyさんと記念撮影
表彰式後、Beverlyさんと記念撮影

アナウンサーは魅力的なお仕事です

 これまで、なるのも大変、なってからも大変、という話ばかり書いてしまいましたが、それはADも記者も、教師もお寿司屋さんも一緒で、大変な部分はもちろんありますが、それを吹き飛ばすくらい魅力的な職業なので、なりたいと思う方には、ぜひ目指していただきたいと思うのです。(次回トーク編は第30回「よくいただく質問にお答えします」です)

本日のごのへの・ご・ろ・く

「伝える語 人の役に立つ 伝わる語」