2月下旬から舞台の中止が相次いで、演劇界は厳しい状況にある。その中で、37年もの間、井上ひさし作品だけを上演し続けている「こまつ座」は、27日からクラウドファンディングを始めている。

こまつ座は、「きらめく星座」の東京公演、「イヌの仇討ち」の地方公演のそれぞれ一部が中止となり、「雪やこんこん」の全公演が中止となった。そのため損害額は7000万円以上となり、今回のクラウドファンディングとなった。3000円の存続応援コース1から100万円の存続応援コース9まで、支援額によって、特典などリターンも異なる。

支援募集は7月31日までで、目標金額は1000万円だが、すでに700万円を超えている。7月に「人間合格」を上演予定だが、ガイドラインによれば、従来の座席配置はできないため、赤字の可能性も高い。井上ひさしさんの三女で、こまつ座代表の井上麻矢さんは「私たちこまつ座も打撃を受けて、いろいろと申請しているんですが、とにかく時間がかかります。こんな時だからこそ届けたい『せりふという名の言葉』がいつにも増してありましたが、届けることがかないませんでした。新型コロナで皆さんが疲れ切っている中で、劇場が戻ってきて、まずスタートを切ることが大事だと思います」。

秋田・仙北市を拠点とする、創立69周年の「わらび座」。「劇団創立以来の最大の危機」にあるとして、3月から4月にかけて支援金を募ったところ、1カ月半で、45都道府県からのべ4000人、1億円を超える支援金が集まった。

わらび座は、田沢湖近くにオリジナルミュージカル公演を行う劇場や宿泊施設、温泉、レストランなどを併設した「あきた芸術村」を運営し、全国から多くのファンを集め、年間24万人が訪れていた。しかし、新型コロナの影響で、公演もできず、観光客などのキャンセルが続いた。

初日を延期していたミュージカル「空!空!!空!!!」も6月6日から開幕する。わらび座では「6月は土日のみの上演で、7月以降は通常上演の予定です。ただ、ガイドラインによる座席配置では、観客は2割に制限され、劇場の定員は700人なので、150人しか入場できない。しばらくは大変だと思います」。善意の支援を受けたわらび座が、国内の演劇再開の先陣を切ることになる。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)