毎年の恒例となっている雑誌「ミュージカル」の「2020年ミュージカル・ベストテン」が最新号(3・4月号)で発表され、20年に初演された作品のベストテンでは劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」が1位でした。初演、再演の作品、男優、女優、演出家の各部門に分かれ、ミュージカルをよく見ている演劇評論家、演劇ジャーナリストの20人が同誌のアンケートに答えた結果を集計したもので、私も10年以上参加している。

四季は最近では「アラジン」「パリのアメリカ人」が1位ですが、今回は一般向けのミュージカルとして久々に制作したオリジナル作品でベストワンになった。脚本に長田育恵、演出に小山ゆうなと外部の若い才能とタッグを組んで、心に傷を抱えた男が壊れかけた旧式ロボットのタングとの旅を通して、絆を深め再生していく姿を描いた、心温まる作品でした。私も1位に推したけれど、四季の財産演目になっていくだろう。

ちなみに2位は城田優主演「ナイン」、3位は音楽座ミュージカルを東宝が制作した「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」、4位は藤田俊太郎演出の日英合作「VIOLET」、5位は望海風斗主演の宝塚雪組「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」。再演では「ビリー・エリオット」が1位でした。

男優では1位は「ナイン」主演の城田優で、以下、2位「シャボン玉」主演の井上芳雄、3位は「天保十二年のシェイクスピア」主演の浦井健治、4位は「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」が最後の舞台となった三浦春馬さん、5位が「ビューティフル」などに出演した中川晃教と続きました。今年1月に三浦さんが主演予定だった「イリュージョニスト」がコンサート形式で上演されましたが、カーテンコールに並んだ出演者たちの涙を見て、三浦主演で見たかったという思いが強くなりました。

女優は1位が「ナイン」「シャボン玉」に出演した咲妃みゆで、2位は「サンセット大通り」主演の安蘭けい、3位に「ワンス」主演の望海、4位に「アナスタシア」主演の木下晴香、5位に「フラッシュダンス」主演の愛希れいかでした。ベスト5に宝塚ОGの咲妃、安蘭、愛希、そして現役の望海と宝塚勢が4人も入っていて、宝塚の底力を見る思いがしました。

演出家では「ナイン」「VIOLET」「天保十二年」の藤田俊太郎が1位でした。初演ベストテンで「ナイン」2位、「VIOLET」4位、「天保十二年」6位と、演出した3作品がすべてベストテン入りしており、20年は「藤田イヤー」と言ってもいいかもしれません。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)