緊急事態宣言で都内の舞台中止が相次いだ。その中で、2年越しの初日が千秋楽となったのがミュージカル「アニー」だった。

「アニー」は子役たちが活躍する作品で、1986年の初演以来、主演のアニーをはじめ子役は毎年のオーディションで選ばれている。昨年も4月下旬から5月上旬にかけて上演予定だったが、緊急事態宣言下にあって中止となり、夏の地方公演も中止となった。本来なら、出演予定だった子役たちは1度も舞台に立つことなく、昨年秋に行われる新しいオーディションで選ばれる次期子役たちと入れ替わるはずだったが、主催者は厳しいレッスンを重ねた子供たちの夢をかなえてあげたいと、オーディションは開催せず、異例の続投を決めた。

しかし、明日24日が待ちに待った初日という4月23日夜に、緊急事態宣言が25日から発令されることが発表された。そのため、辛うじて24日だけは公演を行うものの、25日から5月10日までの東京公演はすべて中止となることを知らされた子供たちは号泣したという。

幸い、24日は2回公演で、アニー役をはじめダブルキャストの子役たちも1度は舞台に立つことができた。1公演に2人ずつ出演する計12人のダンスキッズも、急きょ1公演6人編成に変更し、舞台を華やかに盛り上げた。

初日が千秋楽となった舞台のカーテンコールでアニー役の荒井美虹さんは「精いっぱいやりきったので悔いはありません」とけなげにあいさつした。しかし、幕が下りると、客席にも子供たちの泣き声が聞こえてきたという。秘書役で初参加した笠松はるはブログで「みんなが笑顔だった稽古初日に、初日の終演後に楽屋で子供たちの悲鳴のようなおえつが響きわたるなんて、誰が想像できたでしょう」とつづった。夏には地方公演の予定があるが、その時は笑顔にあふれた子供たちの舞台を見たいと思う。

そして、東京公演がすべて中止となったのが中井貴一主演「月とシネマ」。稽古の段階で出演者の1人が陽性と分かり、4月17日から28日までの公演は中止となり、30日が13日遅れの初日の予定だった。しかし、緊急事態宣言で5月9日までの全公演の中止が決まった。5月12日からは大阪公演の予定だが、緊急事態宣言が延長された場合、これも中止となる可能性がある。昨年の最初の緊急事態宣言でも舞台中止が相次いで、演劇界は疲弊したけれど、今回も影響は計り知れない。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)