突きつけられた銃口の硬さ、鉄の冷たさ、引き金に指がかけられた恐怖…40分に及ぶ尋問シーンには、その場に居合わせたようなヒリヒリする感覚がある。

 「ハート・ロッカー」(08年)で米軍兵士の極限心理を描き、「ゼロ・ダーク・サーティ」(12年)でCIAの裏側に切り込んだキャスリン・ビグロー監督が、50年前のデトロイト暴動にスポットを当てた。死者43人の大半は白人警官に射殺された黒人である。

 混乱の中で、市内のモーテルに居合わせた9人が警官に銃を突きつけられ、暴力的な取り調べを受ける。黒人の中に2人の白人女性の友人が交じっていたことも偏見に凝り固まった白人警官の憎悪に火を付ける。警官役ウィル・ポールターの思い詰めた目が怖い。導入から時代描写はきめ細かく、揺れるハンディカメラはニュース映像のようだ。60年代の騒乱に放り込まれたような感覚になったところで、主題の尋問シーンに差し掛かる。見事だ。

 惨劇を起こした警官は無罪となり、題材の「アルジェ・モーテル事件」は未解決のままだ。生存者の証言をもとに大胆に「真相」に迫ったビグロー監督の勇気に改めて感服する。【相原斎】

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