2030年というわずか10年後の近未来を描いたSFサスペンス作品。

同作が描く日本は、働ける人間は50%。未来を担う子供が10%で、残り40%は老人と生活保護者。AIが健康状態など全ての個人情報を管理し、生活に欠かせない状況となっている。そんなAIへあるコマンドプログラムを仕込むことで、暴走したAIが命の選別を始める。サイバーテロリストが実際に起こしそうな、リアルな恐怖を味わえる。

正直、洞察力がある方であれば、犯人は分かってしまうだろう。実際、記者も分かってしまった。だが、そんなことはどうでもいいと思わせるテンポの良さがある。まさに息つく暇もなく次から次へとシーンが展開され、見る者を作品の世界へ引き込む力を感じた。

その中心にいるのが大沢たかお演じる桐生浩介。演技はもちろん、筋肉のよろいに目がいってしまった。途中から「キングダム」で演じた王毅にしか見えなかった。また、アクセントになっているのが三浦友和演じる合田京一だ。古き良き時代の刑事を演じることでデジタル対アナログを象徴している。デジタルに成り切れないおじさんには、安心できる存在だった。

【川田和博】(このコラムの更新は毎週日曜日です)