こんなにも居心地の悪い土屋太鳳がいただろうか。元気で明るく周囲にエールを送るような作品に数多く出てきた土屋にとっては間違いなく挑戦で、新しい魅力を発揮した。

真面目で正義感が強い小春(土屋)が、数々のトラブルを経て、医師の大悟(田中圭)と結婚。妻として、8歳の娘ヒカリ(COCO)の母として暮らし始めるが、やがて大事件を起こしてしまう。

ストーリー全体に漂う不穏でホラーな雰囲気、現実離れしたファンタジック感、何かおかしいぞというゾワゾワした気持ちで、ラストまで引っ張られた。

結婚を決めて2人がダンスするシーン、これ以上ない幸せな表情と、空に広がるどす黒い雲。怖すぎた。そう思って見ると、土屋の笑顔だって怖くなってくる。

全部が全部、裏がありそうというわけではない。小春は真面目がゆえ、幸せにになりたいという思いが空回りしたり、追い詰められてしまう。頑張ったのにどうして、という思いがあふれて小春が大泣きする場面では、本当に切なくなった。怖さと共感、絶妙なブレンド加減の作品。渡部亮平監督。