コメディアンを目指し、派遣会社のピエロで生業を立てる男が、ゆがんだ社会のはざまで“悪のカリスマ”になっていく…。19年の前作は主人公アーサーの心根の優しさ、抱える孤独など人間味のある部分と、ジョーカーに変貌してからの相次ぐ凄惨(せいさん)な殺人シーンなど、正反対の狂気の沙汰を身を削るように演じたホアキン・フェニックスがアカデミー賞主演男優賞を受賞。全世界興行収入(興収)1500億円、日本でも50億円超と大ヒットした一方、模倣事件も発生し物議も呼んだ。

ラストでジョーカーが収監された前作から5年。5人を殺害した罪に問われ、アーカム州立病院に収監され裁判を待つアーサーが、院内の合唱サークルで歌うリーと出会う。社会的弱者ながら、悪のカリスマに祭り上げられた自らを信奉するリーと恋に落ちる。

前作のイメージを持って今作を見た場合、驚き、戸惑う人もいるかも知れない。互いへの愛情など、アーサーとリーの心象風景を表すのに、しばしばミュージカルシーンが織り込まれるなど、前作では想像もしないシーンが展開される。日本に先立つ10月4日に公開された北米での興行成績の苦戦、評論家筋の厳しい評価も報じられている。ただ…そんな事前情報抜きに、リーを演じたレディー・ガガの歌声と、今回も極限まで作品に身をささげたフェニックスが競演する、まさに題名が意味する「2人狂い」するさまに、身を委ねてみてはいかがだろうか。【村上幸将】

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