大阪府では新型コロナウイルスの1日の新規感染者数が連日、過去最多を更新しています。2月末に緊急事態宣言を先行解除した大阪府の吉村洋文知事(45)。先行解除後の「青写真」を崩したのは想定外の「変異株の猛威」でした。関西に広がる「英国型」の変異株は感染速度だけでなく、重症化率が高く、重症化も速いと言われていますが、それらを裏付けるデータも明らかになってきました。 医療非常事態宣言の発出を決めた7日の対策本部会議後の記者会見。「緊急事態宣言の解除要請の時期は早かったのではないか」と問われると、吉村知事は「大阪において、緊急事態宣言を解除したのは2月末です。2月末時点の陽性者の数は1日50人程度。専門家の意見も聞いて解除を判断した。解除の判断自体が間違っていたとは思っていません」と反論しました。

「変異株の感染スピードの速さと重症化の速さを過小評価していたのではないか」の質問には「感染者が増えれば、それに適切に対応することが重要だ」と説明し、「解除の判断は間違っていないと思う」と繰り返しました。

大阪府は京都・兵庫両府県とともに3月7日の緊急事態宣言の期限を前に2月末に先行解除しました。ただ大阪市内の飲食店などを対象に午後9時までの時短営業の要請を継続。吉村知事は、徐々に解除することで感染をコントロールし、経済と感染対策の両立を図りながら、4月以降のワクチンを待つ考えでした。

しかし、青写真は崩れました。変異株の猛威です。

府の1日あたりの新規感染者は3月下旬から急増。3日連続して300人台となるなど、宣言解除からわずか1カ月で「まん延防止等重点措置」を政府に要請しなければいけない事態になりました。4月7日には府の独自基準「大阪モデル」に基づく警戒度を最高の「赤信号」に引き上げ、「医療非常事態宣言」を発出しました。

9日の府庁での会見。吉村知事は「N501Yの英国型の変異株は感染速度だけではなく、重症化率が高いことはほぼ明らかだ」と危機感をにじませ、「第3波とは明らかに違いが出てきている」とデータを示しました。

府の分析では「第3波」(10月10日~2月28日)と「第4波」(3月1~31日)の重症者のうち、50歳代以下の割合が約3割と急増。さらに第4波の40歳代、50歳代の重症化率が第3波に比べて約1・7倍に急増しています。

「これまでは重症化しにくかった40歳代、50歳代の重症化率が高くなってきている。重症化するスピードも速い」とし、「40歳代、50歳代の重症化率が高くなると、当然のように70歳代、80歳代の重症化率は下がらない。(この変異株は)毒性が強い」と警戒感を強めます。

また第3波では、感染者(3万6065人)のうち30歳代以下が占める割合は45・6%だったが、変異株の感染者(897人)では58・2%に上ります。

「今までのセオリーは通じない」と吉村知事。「今回のウイルスはどこで、いつどのエリアで出火するか、専門家も僕も読み切れない」。大阪府の10日の新型コロナウイルスに新規感染者数は918人。過去最多を更新しました。想定を超える変異株の猛威。吉村知事の表情には苦悩がにじみます。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)