“大阪人トップ”紅ゆずる率いる星組は、異色の「落語ミュージカル」に臨む。大ネタ「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」などをもとにしたミュージカル「ANOTHER WORLD」で、新人公演は天華(あまはな)えまが3回目の主演。宝塚は5月15日、東京は7月5日。

 「ANOTHER WORLD」新人公演は、最上級生7年目に入った天華(あまはな)えまが務める。新人主演は3回目。難役だけにキャリアを買われた。

 「1回目はただ驚き、2回目はすごく不安でした。でも今回、今までの2回が無駄じゃなかったと思えて、すごくうれしかった。自分がどう演技したいのか、しっかり見せていきたい」

 滋賀県出身で「吉本のお笑いが大好き」。大阪・なんばグランド花月、京都・よしもと祗園花月、昨秋オープンしたよしもと西梅田劇場にも見に行く。

 「寄席が好きで、落語に触れる機会も多かった。今は(吉本新喜劇座長の)辻本茂雄さんが、私にとって神です。間がすごい。お客さんの動かし方が神!」

 趣味の演芸鑑賞も学びの場にする。新人初主演は一昨年の「桜華に舞え」。前トップ北翔海莉(ほくしょう・かいり)が、桐野利秋を演じた退団公演だった。

 「少しでも北翔さん(本役)に近づきたくて、本番より重い刀で、毎朝100回、素振りをしていました。びっくりするぐらい(筋肉)もりもりに(笑い)」

 以来、和物への出番が多く「立ち回り担当です」と笑う。好機を努力で引き寄せる。もともと、天海祐希のファン。今も気持ちが沈むと、DVDを見る。

 「大きくて、繊細な芝居が好き。(宝塚)音楽学校では、掃除(の担当)場所が(天海と)同じだったんですよ」。天海とは、宝塚音楽学校の創立100周年式典の際、初対面した。

 「たまたま劇団レッスンを受けていたら、天海さんがのぞきに…。ここで話し掛けなかったら一生(機会は)ないと思って、汗だくのレオタード姿で走って追い掛けました」

 芸名は天海から「天」の字をもらった。そう告げると抱きしめてくれた。「号泣して言葉は伝わらなかったと思います」と照れた。退団後、宝塚イベントに顔を出さなかった天海だが、音楽学校の式典には出席した。その場に居合わせた強運ぶり。この勢いで、ラッキー“ボーイ”はスターへの階段も引き寄せていく。

 ◆RAKUGO MUSICAL「ANOTHER WORLD」(作・演出=谷正純氏) 「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」「朝友(あさとも)」「死ぬなら今」など、死後の世界を題材にした落語をもとに、「この世」と「あの世」を往来して展開される異色和風ミュージカル。大坂の両替商の若だんな・康次郎は、高津神社の境内で菓子屋の嬢(いと)さん・お澄に一目ぼれ。2人そろって「恋わずらい」で「あの世」へ来てしまう。「あの世」で再会した2人だが、閻魔(えんま)大王の横恋慕にあってしまう。

 ☆天華(あまはな)えま8月28日、滋賀県生まれ。12年入団。組まわりを経て13年星組配属。北翔海莉の退団公演だった16年「桜華に舞え」の新人公演で初主演。紅ゆずる本拠お披露目「スカーレット・ピンパーネル」でも新人主演。身長171センチ。愛称「ぴーすけ」「えりか」「ペン」。