宝塚歌劇団の宙組トップ真風涼帆と、相手娘役・潤花の退団公演「カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~」が、兵庫・宝塚大劇場で上演中だ。フィナーレでは、真風、潤ともに真っ白な衣装で、デュエットも披露している。宝塚大劇場は4月17日まで。東京宝塚劇場は5月6日~6月11日。真風はトップ在位約5年7カ月、本拠地通算9作で男役に別れを告げる。

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完熟期を迎えた現役最長トップが、男役としての集大成をぶつけるサヨナラ作。「最終的に、私のボンド像がお客さまにどう映るか。皆さまに委ねたい」。スーツを、トレンチコートを、見事に着こなし、ハットに銃…小物も操り、真風流のジェームズ・ボンドを仕上げてきた。

イアン・フレミングの「007/カジノ・ロワイヤル」をもとに、小池修一郎氏が脚本・演出。小池氏も真風ボンドを「狙った通り、涼やかでダンディー」と絶賛。「単純にかっこいい。男役としての説得力がある。今後、世界中でも(ボンドの)パブリックイメージのひとつになるような」と最大級の賛辞を送る。

真風は、小池氏の「NEVER SAY GOODBYE」で初舞台を踏み、トップ就任後には同作主演作としても臨むなど、縁が深い。小池氏はトップへ上り詰めて退く真風を「最終的に伸びやかなスターだった」。今回のボンド像を見ても「つねに宝塚にいるトップではない」と評した。

その真風に寄り添いつつも、個性を発揮する潤は、小説にはないオリジナル・キャラクターで、ロマノフ家の末裔(まつえい)ながら、学生運動に身を投じるデルフィーヌにふんした。

真風演じるボンドと敵対するKGB諜報(ちょうほう)部員ル・シッフルには、次期トップの芹香斗亜が、近年磨いてきた敵役芸で好演。人気スター桜木みなとは、潤ふんするデルフィーヌの恋人、過激派の学生としての役柄を熱演した。

今作では紫藤りゅうら主力スターと、宙組発足時から組メンバーとして支えてきた寿つかさ組長らも同時退団する。寿はロマノフ家末裔のロマノフ大公にふんし、劇中でも、宙組メンバーと、サヨナラを思わせるセリフのやりとりも見せている。【村上久美子】