10月クールのドラマが続々と開始された。個人的に注目しているのは、豪華キャストの「日本沈没」と、ヒットしたあな番の後継でもある「真犯人フラグ」、そして映画「ヤクザと家族」の藤井監督と綾野剛コンビによる「アバランチ」。まだ始まったばかりなので評価は難しいが、期待感大の作品たちである。

しかし、視聴率が20%を超える作品が本当に少なくなったと感じる。「半沢直樹」のような、お化けドラマはさておき、人気シリーズの「ドクターX」ですら20%に届かない時代である。若者のテレビ離れのほか、録画やTVer、各配信サイトですぐに見られることもあり、リアルタイムで見る習慣が失われつつあるのではないかと思う。作り手としては少し寂しい話ではあるが、みてもらえる機会が増えること自体は歓迎であり、それはそれでいい気もする。

配信ドラマ。昨年話題になったNetflix(ネットフリックス)の「愛の不時着」や「全裸監督」をはじめ、注目作品がこちらも多い。地上波ドラマの対抗になりつつあるのは明白である。Netflix以外にもU-NEXTにAmazоnプライム・ビデオ、さらにはhuluにFODプレミアムにParavi、そして追い打ちをかけるようにディズニー・チャンネルも新作ドラマを次々と発表している。まさに、ドラマ群雄割拠時代であるといえる。

中には、十分な予算をかけた大作映画並みのクオリティーを誇る作品もあり、地上波ドラマの視聴率が伸び悩む原因にもなっていると感じる。質のいいコンテンツが増えるのはうれしいことだが、すべての動画配信サービスに入っている家庭はなかなかなく、学生時代に経験した「昨日あのドラマみた?」的な会話が少なくなっているのではないかと勝手に危惧している。ちなみに仕事柄、ほとんどのサービスに加入しているが、ユーザー目線でいうところ、スピンオフはまだしもシーズン2を配信限定にしたりするのはやめてほしい。さらにサッカー日本代表と大リーグの大谷選手の試合は国策として、地上波で必ずやるべきだと主張しておく。

前段が長くなったが、今回紹介するのは現在Amazоnプライム・ビデオにて全話放送中の「僕の姉ちゃん」に出演している杉野遥亮。このドラマ、配信ドラマなのだが、2022年にテレビ東京にて放送予定、と逆輸入というか視聴者になんとも優しいドラマでもある。

物語は、ユーモラスで手厳しい姉(黒木華)と、姉に翻弄(ほんろう)されるが素直に話を聞く弟(杉野遥亮)の、両親不在のつかの間の2人暮らしを描いている。仕事から帰宅した部屋でお酒を飲みながら、恋、仕事、趣味、人生にまつわる会話が繰り広げられる。姉の言葉は一見いじわるそうに見えるが本心をついていて、原作である益田ミリの世界観を堪能することができる。

さて杉野遥亮、初めて見たのは映画「キセキ -あの日のソビト-」だろうか。事務所の先輩の松坂桃李、菅田将暉がメインキャストを務め、物語の中心となる音楽グループの一員を務めていた。正直この頃はまだパッとしない印象だったが、2019年のドラマ「俺の話は長い」では、主人公の通うお店のバーテンダーとして堂々の演技を披露していた。

185センチの長身に端正な顔立ち、もちろんモテる設定である。バラエティーなんかでは現在の若者ならではの自由な発言で多少天然な姿も見ていたが、今回のドラマで印象はがらりと変わる。ぱっと見、姉よりも弟の方がモテそうだが、そこがドラマの中では逆転する。恋や仕事、人生をどこか悟っている姉に対し、人間への生まれ変わり1回目のごとく不器用な弟を演じる。

ここで、俳優論になるが、若い俳優は意外とモテ役やヤンキー役はうまく演じられる。素が近いのかもしれないが、とにかく自信満々に演じていれば何とか見えるものである。逆に難しいのが、非モテ男の役。どこか全体からにじみ出る自信のなさや残念感を出すのが非常に難しい。しかし、物語の冒頭で、会社の窓際で1人コーヒーを飲むたたずまいから、非モテ臭を十二分に感じとることができ、回が重なるごとに見事に役に入り込んでいた。これまでイケメン俳優の1人の認識であったが、今作でもっといろんな役をみたいと思わせる俳優の1人となった。今後の活躍に期待です。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画『リュウセイ』の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営。今夏には最新作「元メンに呼び出されたら、そこは異次元空間だった」が公開。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)