ヤンキー、いわゆる不良少年。学生時代クラスに数人いた彼らは近寄りがたい存在であったが、漫画やドラマ、映画に登場する彼らには不思議と誰もが共感して憧れた。

憧れるヤンキーの定義としては「けんかが強くて仲間思い、そして女子が苦手で多少のバカ」でよいだろうか。年代的には「ろくでなしBLUES」「湘南純愛組!」がど真ん中で、彼らの年を超えてからも「クローズ」「BADBOYS」などと出会い、最近では「東京卍リベンジャーズ」など、つい手に取って読んでしまう。

いくつになっても、大人や社会への不満はじめ、仲間たちへの思い、そして単純な強さに対して、青春時代を思い出して魅了されるのではないかと思う。

上述した5本すべてが映像化、もちろん人気原作なこともあるが、なにかと映像との相性がいい気がする。まず、登場人物が基本高校生なので、若手人気俳優を多数起用できる上、日本独自文化として海外にもセールスしやすいのではないかと思う。ドラマであれば毎クール、映画でいえば毎年、製作人が自ずと手を伸ばす理由も納得できる。

そこで、今クールは「ナンバMG5(ナンバエムジーファイブ)」がドラマ化。原作は少年チャンピオンで2005年から連載していた同名の漫画。一風変わったタイトルは主人公「難波がマジギレ(MG)する5秒前」からきているらしく、「今日から俺は!!」などのコメディー漫画の系譜だろう。

物語は、家族全員ヤンキーの家に育った主人公が、高校ではヤンキーをやめてさわやかな青春時代を過ごそうとするが、毎回いざこざに巻き込まれるという話である。主演は間宮祥太朗、ライバル役に神尾楓珠、ヤンキー一家には宇梶剛士、鈴木紗理奈、満島真之介、原菜乃華と魅力的なメンバーがそろい、今クールの台風の目になりそうな予感がする。

さて、そこで今回紹介したいのは「ナンバMG5」でヒロインを務める森川葵。2010年「ミスセブンティーン」のグランプリに選ばれた後、モデルと並行しながら女優業に。26歳にしてその出演数は多く、同事務所の北村匠海同様、若い頃からスター候補生と大事に育てられてきた感がある。また、バラエティー番組「それって!?実際どうなの課」では、さまざまなジャンルの高難易度な技をすぐさま習得し、その多才ぶりにいつも驚かされる。

そんな彼女だが、多数の作品で印象的な役を演じるが、キャリアに対してこれといった代表作がないようにも感じる。普通の俳優だと十分だが、こちらの勝手な期待値からすると少し物足りない。そこで今回の作品、26歳にしての高校生役だが、主役の間宮祥太郎(28歳)同様、芸達者の2人が繰り広げるやりとりはなんとも安定していて面白い。

「今日から俺は!!」もそうであったが、この手の作品はキャスト陣にかなりの技量が要求される。メイン演出を務めるのは本広克行、「踊る大走査線」シリーズなど熱い作品の印象が強いが、同作品で深津絵里、最近では「チャンネルはそのまま」の芳根京子と、女性に対しての演出が絶品なのではと思っている。

そこで、これまでエリートといっていい俳優業を歩んできた彼女、ヤンキードラマで本広演出の元、大いに飛躍するのではないかと期待する。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営。2月17日からは東京・渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホールで演出舞台「政見放送」が上演された。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)