国民的女優。名実ともに真っ先に思い浮かぶのは、綾瀬はるか、新垣結衣、長澤まさみの3人。10代でデビューし、ドラマに映画、CMと多数出演して20年近く必ずどこかで見かけてきた。

他にも、石原さとみ、戸田恵梨香、吉高由里子、安藤サクラ、満島ひかり、宮崎あおいに蒼井優と…人気女優はたくさんいるが、前出した3人が頭ひとつ抜けているのではなかろうか。みな30代も中盤に差し掛かり、結婚や出産などで仕事をセーブしつつあるが、ここからさらに何人かが国民的を越えて令和を代表する女優になっていくであろう。

ロベルト・レヴァンドフスキ。俳優を紹介するコラムだが、あえてサッカー選手の名前をここで挙げてみる。サッカー好きなら誰もが知っている世界最高峰のストライカー。ドイツ・ブンデスリーガで7度の得点王になり、シーズン最多得点はじめ、母国ポーランド代表としても歴代最多得点を更新し続けている。

しかし、同年代にメッシ、C・ロナウドがいることで、バロンドール(欧州最優秀選手)の獲得にはいまだ至っていない。最大のチャンスであった2020年はコロナ禍で惜しくも中止になった。

実力はもちろん申し分ないが、誰もが知っているメッシや、さまざまなリーグで得点を量産するC・ロナウドに比べるとブンデスリーガだけでの活躍では多少、疑問符が残る。そんな中、今年34歳にしてスぺインのバルセロナへと移籍し、周囲を驚かせた。さすがにピークを過ぎたと思われたが、ここまで7試合で9得点。その得点力は健在で、さすがの一言である。バロンドールをとる日も近いであろう。

そこで今回紹介したいのは、長澤まさみ。「東宝シンデレラ」オーディションで3万5000人の中から選ばれ芸能界入り。ティーン雑誌の専属モデルなどを経て、大ヒット映画「世界の中心で、愛をさけぶ」でブレーク。その後も映画を中心にコンスタントにドラマや舞台に出演。近年ではドラマから映画化された「コンフィデンスマンJP」のダー子や、「キングダム」の楊端和、木村拓哉と共演した映画「マスカレード」シリーズなどが記憶に新しい。

特にダー子役はこれまであまりなかったコミカルな役で新境地といえるのではないかと思われる。もちろん誰もが知っている国民的女優だが、綾瀬はるかや新垣結衣と比べると、ドラマでの実績だけほんの少し落ちる。綾瀬はヒット作多数に大河主演、新垣は社会現象になった逃げ恥に「コード・ブルー」シリーズ、いずれも大ヒットドラマである。

長澤もヒット作はあるが少し物足りない。そこで、今クール、4年ぶりに民放ドラマに主演する。タイトルは「エルピス-希望、あるいは災い-」、役は女子アナウンサー。社会派エンターテインメント作品で、演出に映画「モテキ」で組んだ大根仁、脚本を映画で実績のある渡辺あや(民放初)が務める。

共演に眞栄田郷敦、三浦透子、鈴木亮平と実力派俳優が並び、音楽を大友良英とスタッフ・キャストの名前を見ると大いに期待できそうだ。その布陣は今期バルセロナで名パサーに囲まれたレヴァンドフスキをほうふつとさせる。彼女の実力がドラマというピッチで大いに躍動する日はもうすぐなのかもしれない。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーに。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。今年は2月に演出舞台「政見放送」を上演、5月20日には最新監督映画「さよならグッド・バイ」が公開された。8月10日から14日までは演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」を上演。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)