舞台演出。人生とはわからないもので30歳ぐらいまでまともな演劇に触れたこともなかったが、ここ数年は年に2本のペースで演出をしている。演出といってもまだまだなところはあるが、何となく様になってきている気もする。もともと映画もどこかで習ったわけでもなく作っているので、舞台もキャリアを重ねると何か見えてくるものがあるのかもしれない。

ちなみに、演出するという点では同じだが、最後に自身で編集できる映画と、最後にお客さんの前に俳優が立つ舞台とでは似て非なるものであり、根本から全く違うものだといまさらながら感じている。

いきなり舞台の話から始めたが、現在絶賛稽古中である。昨年夏に上演した舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」の第2弾の製作に取り掛かっている。高校の演劇部が舞台、タイムスリップとタイムリープを繰り返す設定に、歌にダンスにミニゲームとエンタメ要素が詰まった内容である。初舞台の子はじめ若い俳優がメインなのも特徴であり、今回はほとんどのキャストをオーディションから選んだ。出演者は11人、下は19歳から上は25歳。人気やキャリアではなく、純粋に一緒に作品を作り上げたいメンバーたちを選んだつもりだ。

本作品の特徴でもあるが、新人俳優の発掘が目的のひとつである。過去何度か初舞台の子がいたが、稽古期間も含めて1カ月弱の間にわかりやすいぐらいに成長が見てとれた。顔合わせの時にどこか自信のなかった表情が、千秋楽を迎える時には自信に満ちあふれていたりする。その瞬間、演出家冥利(みょうり)に尽きるというか、人知れず感動しているのはここだけの話にしておく。キャリアのある俳優さんたちと高いクオリティーの作品も作りたいが、若手俳優でしかできないこの舞台も続けていきたい。タイトルに勝手に入れたが、若手登竜門の舞台になっていければうれしい。

さて、そこで紹介するのは今回の舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」で主演を務める富樫慧士。ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト準グランプリを経て、バーニングプロダクションに所属。2020年「仮面ライダーセイバー」の緋道蓮/仮面ライダー剣斬役で俳優デビュー、その後も映画にドラマと活躍。現在21歳、超エリートコースといっていいだろう。

縁あり舞台に出演してもらうことになったが、舞台自体初出演にして初主演。何日も稽古を重ねているが、とにかく好青年。キャリアを見るとてんぐになってもおかしくない年頃だが、稽古場に一番に現れ、初日からセリフもしっかりと入っている。年下組ながら座長として、演出家の意図をくみ取りみんなに伝える役目も担う。本人の素養もあるが、短いキャリアの中で濃い俳優生活を送ってきたに違いないと思う。今回の舞台もだが、今後の彼の活躍に大いに期待したい。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。昨年11月には俳優藤原大祐主演の最新作「追想ジャーニー」を公開した。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)

舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」のポスター
舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」のポスター
舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ2」のポスター
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