女優土屋太鳳(21)の命がけの番宣が話題になった。新番組が勢ぞろいするTBS特番「オールスター感謝祭」のミニマラソンで失神寸前の力走。両脇を支えられてフラフラ状態の中、必死にドラマを訴える姿に多くの感動が寄せられた。テレビがつまらなくなった原因のひとつとして挙げられることの多い番宣だが、これだけ魂を注ぐニュータイプの登場にいろいろ感動した。

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 太鳳ちゃんは、TBS日曜劇場「IQ246~華麗なる事件簿~」(主演織田裕二)の代表として、番組恒例の赤坂ミニマラソンに出場。現役の日本女子体育大生でもあり、TBS外周のしんどい急坂を、リオ五輪金メダリストのモハメド・ファラー、カンボジア代表の猫ひろしら強豪を相手に走った。8位でゴールするとその場に倒れ込み、血相を変えてひな壇から飛んできた織田らに介抱されながら、画面からフェードアウトした。

 数分後、両脇を支えられながら戻ってきた彼女はまだフラフラ。「このマラソン作った方、すごいなと。きつくて」と肩で息をし、カメラに向かって「IQ246、華麗なる事件簿、本当にすてきなドラマになっています。本気で見ていただきたいです」と訴えた。魂の番宣に、織田、中谷美紀ら共演者たちが号泣。司会の今田耕司も「こんな命がけの番宣あります?」と泣いていた。「先輩方が立っているので」と一度はいすを遠慮する律義さで、最後は「死ぬかと思ったけど、よかった」と笑顔。キュートな頑張り屋ぶりに、一発でファンになってしまった。

 番組関係者によると、あのタイミングで番宣をするとは誰も思っていなかったという。フェードアウトしたまま休んでもらうつもりだったが、自ら立ち上がってカメラの前に戻った。新番組の祭典とあって、持ち前のプロ意識だったのかもしれない。女性スタッフは「感動してみんな泣いていました。『食べたいものはないか』とか、ねぎらいの輪ができて」。14日に行われたPR試写会で太鳳さんは「素晴らしい方々の、こんなすてきなドラマはないと思い、伝えたくて気合を入れて走りました」。客席から「見たよ」「よく頑張った」と大きな拍手が寄せられた。

 考えてみれば、この人の番宣はいつも全力だ。主演映画「青空エール」の宣伝で始球式を行った時は、投げたボールがワンバウンドしてしまい「みんなの気持ちを込めて投げましたが、自分の精神力が足りなかったのかな」とみるみる悔し泣き。出演映画「金メダル男」の監督である内村光良がテレビ企画で鉄棒の特訓をした際は、激励のため手作りの応援ダンスを披露。創作ダンス全国大会出場の実力を生かし、ポンポンを振って「金メダル男、ナンバーワン!」と完璧に踊っていた。

 テレビ界を見渡せば、バラエティー番組や情報番組で、ドラマ番宣が当たり前の光景になって久しい。かつてはそんな習慣もなかったし、公共の電波で自分がらみの宣伝をするのは行儀が悪いというのが共通認識だったように思う。長い不況の中、基本的にノーギャラで人気俳優を呼べる番宣はじわじわ常態化し、今やバラエティーとドラマ番宣は持ちつ持たれつ。同じ俳優、女優のヘビーローテーションも改編期の風物詩となり、番宣側とMCの攻防、というお約束も見慣れた。

 渋々やっている俳優の番宣は進行のお荷物になっているケースも多いし、最近は番宣逆効果説もよく耳にする。番宣も過渡期かなと思っていたところへ、“番宣で感動”という新しい1ページに見入ってしまった。個性の問題なので、誰もが感動路線をいく必要はない。要は心がこもっているか、こなしているのかの違いで、マンネリやヨイショなどのイージー路線では、人の心はつかめないのだろうと実感した。

 1話の試写を見たが、“命がけ”で宣伝するだけあって、かなりおもしろかった。彼女の番宣が刺さった1人として、頼まれもしないのに番宣いたします。TBS日曜劇場「IQ246~華麗なる事件簿」は、16日スタート、日曜午後9時放送です。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)